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学園を制し者 第五話

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「なぜだ!」
できなかった。
風見山が反対側の俺の腕をつかんだからだ。
「信也は今、私の隣に座ろうとしていただろう!」
「それが何か?」
「なぜいちいち対面に行ってまで、信也が水無月の隣に座る必要があるのだ?」
「では、どうして風見山さまの隣に座る必要があるのですか?」
「質問を質問で返すのは不粋ではないか!」
俺をはさんで再びにらみ合う竜と虎もとい風神、雷神。間の俺はいったい何になるのだろう、空気?
「雪にはしっかりとした理由がありますよ」
「……なに?」
「雪はいつもしているように、ご主人さまに『はい、あーん』でご飯を食べさせてあげないといけませんから」
「なッ!……」
「おい、こら! 平気でうそをつくんじゃない」
雪にツッコミを入れながら横目でおそるおそる風見山を確認する。
風見山はプルプルと震え上目づかいで俺をにらみつけていた。
(あ、やっぱり、怒りの矛先はこっちにくるのね……)
「お、お前ぇ! 私も…………私もそんなことしたことないのにぃ!!」
「ちょッ! だからお前はいつもその木刀をいったいどこから取り出してんだ! ていうか、人の話を聞けぇ!」
「問答無用!」
「ひっ!」
風見山のは木刀を取り出すと同時に俺に切りかかった。
「うぁッ! あぶッ!」
その、あとも風見山のを連撃を紙一重、すんでのところでかわし続ける。
「ええい、なぜ当たらんのだ! あきらめて私の刀の塵とならんか!!」
「跡形も残ってねぇ! そして、木刀は刀じゃないからな!」
「うるさい! うるさい!」
「おッ! 落ちつけッ!……って!」
(だめだ……)
風見山は完全に周りが見えなくなってしまっている。
ていうか、ちょっと涙眼だ。
「破ぁ!」
「うぉ!」
(や、やばッ!……)
壁際まで追い込まれてしまった。
もしこれをねらってたなら、あながち周りが見えてなかったわけでもないのか……
(って、冷静に状況を分析照る場合じゃない!)
風見山が澄んだ水のような流れる動作で木刀を振りあげた。
(……ッ! かわせねぇ!)
俺は手をクロスに構えて衝撃に備える。
これは、腕を一本へし折られることを覚悟しなければいけないかもしれない。
「死ねぇ!!」
「くぅッ!」
――ガキン――
「………………」
しかし、衝撃を備えていた俺の腕には、いつまでたっても痛みが来なかった。
俺は恐怖で思わず閉じてしまった目をゆっくり開く。
「大丈夫ですか? ご主人さま」
俺と風見山の間に立っていた雪が風見山の一撃を受け止めていた。
…………ナイフ&フォークで
「そこをどかんか、水無月!」
「そうはいきません。ご主人さまをこの身に変えてもお守りするのがメイドとしての雪の役目ですから」
「…………まぁ、そのご主人さまをピンチに追い込んだのもお前だけどな」
俺のボヤキが聞こえていないのか、雪は何も答えない。
いや、たぶん聞こえててあえて無視してるんだろうけど……
しかし、こうして二人を眺めてると
「ぐぬぅう!」
「………………」
木刀黒髪ポニー少女とナイフ&フォークメイドさんがつばぜり合いはを行っている光景は非常にシュールである。
風見山と雪の力は同じぐらいのようだ。お互いが押して押されて均衡状態を保っていた。
つばぜり合いはいつまでも続くかと思われたが
「………………楓ちゃん。雪?」
「「「………………」」」
ここでまさかの絶対神投入。
名前を呼ばれていない俺ですら冷たい汗が滝のように止まらない。
まさに、手に汗握る戦いだ。圧倒的すぎて
「二人とも、仲良くしましょうね?」
――にこぉ――
「「……は、はい」」
うちの母さんの前では凄腕の剣術少女も完全無欠の万能メイドさんもかたなしだった。
「はぁ……最近しわが増えてしまったようなきがきます」
母さんのつぶやきにみんなして目をそらすしかできなかった。
よく見ると、我関せずといった感じで飲んだくれていた親父の手がかすかにふるえている。たぶんアルコールのせいではない。
「もういいです。少しさめちゃったみたいですがはやく食べましょう。席は私が代わってあげますから信也をはさんで食べればいいでしょう?」
そう言うと母さんは席から立ち上がった。
「いいですね?」
「「「……はい」」」
さすがは母さんすごい統率力だ。昔、軍隊にでも努めていたのではないだろうか。
母さんに言われたとおりに雪、俺、風見山の順で席に座る。
「では、いただきます」
そして、全員が座り落ち着くのを見計らってから、母さんは号令をかけた。
「腹減った!」
さぁ、やっとご飯だ。ここまで来るのにすごく長かった。
実は先ほどからおなかに住んでいる虫が暴れまわって自己主張を続けていたのだ。
俺はさっそくスプーンを手に取り、海老ピラフを掬おうとして
――ガシィ――
「………………風見山、雪。なぜ俺の腕をつかむ?」
食べようとした瞬間、待てを命令された犬の気分だ。
「そ、それは……」
「ご主人さまは、少しはさっするということを覚えてください」
「……?」
雪の言葉の意味がわからない。風見山の頬が赤いわけも
「『はい、あーん』をしてあげます。と言っているのです」
「はぁ!? いらね「……信也?」是非、頂戴したいと思いマス」
…………何で母さんが俺をにらむのだろうか?
ていうか、まず何でそんなにこの二人は俺に『はい、あーん』をしたがるのだろうか。
(………………)
俺は、刹那、考えそうになってしまった『とある可能性』を頭の中から振り払った。
(ちょっと、自意識過剰すぎたかもな)
雪は俺をからかってるだけで、風見山は許婚という義務感からなのだろう。そう自分の中で結論づけることにした。
「……どうしてそこで考えがそっちにいっちゃうんですか」
「雪? なんか言ったか?」
「……? 何か聞こえましたか?」
「い、いや。何も……」
なぜだろう、雪がすごく不機嫌に見える。女の子はわからないことだらけだ。
「では、私からいきますね」
雪は同意を求めるため、風見山に視線を向けた。
「あ、ああ。それでいいぞ!」
「では」
風見山から同意を得られた雪はスプーンを手に持ち、俺の海老ピラフを掬う。そして、俺の顔元まで運んできて
「ご主人さま。口をあけてください『はい、あーん』」
「ああ。あ……む……」
俺は素直に従がい口を開く、そしてようやく一口目に到達した。
バターで炒められた具材のしみ込んだご飯とほのかに香るガーリックの匂いが口の中に広がる。うん、おいしい。
これで、雪の言葉が作業的でなければ100点満点なのだが
「雪」
「はい?」
「ありがとな」
俺は俺にご飯を食べさせてくれた雪に笑顔で礼をいった。親切をしてもらったらお礼、常識である。
「……ふ、不意打ちは反則です」
「……はぁ?」
雪はそう言うと俺に背中を向けてしまった。
そして、海老ピラフを手に持ちながら食べ始める。
あ、皿を落としそうになった。
(食べにくいなら机を使えばいいのに……)
「お、おい! 次はこっちだ」
「あ、ちょ……わかったから引っ張るな」
そんな雪に声をかけることもできず。俺の体は風見山のほうに強制的に方向転換させられた。
「じゃあ。いくぞ」
自分に気合いを入れるように
作品名:学園を制し者 第五話 作家名:hirooger