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学園を制し者 第五話

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「ほら、そんなところでいつまでも肩を組んでないで早くリビングに入ってくださいな」
母さんは若干疲れた顔で俺と親父に提案した。
「うむ」
さっさとリビングに引っ込んでいく親父。
「いや、でも壺は……って、あれ?」
親父の臭い足に粉砕されたかわいそうな壺はいつの間にかきれいさっぱり消えうせていた。
「……? どうしたんですか?」
母さんが不思議そうに俺に尋ねる。
「いや、壺がなくなってるから……」
「それは私が片付けておきました」
「うぉ!」
突然、背後から声をかけられた俺は思わず素っとんきょうな声をあげてしまう。
「ゆ、雪? いつの間に……ていうか片付けるのはや!!」
「完全無欠の万能メイドですから」
「………………」
ずいぶんと便利なメイドさんである。
あれだけ派手に砕け散っていた壺を音もなく粉塵すらも残さず片付ける。
人間のスペックを超えてるような気がするのは気のせいか?
「お先に失礼します」
雪はすました顔で、母さんの次にリビングに入っていっってしまった。
ここに棒立ちしてるわけにもいかないので俺も雪に続く。
「いい匂いだな」
ドアをくぐり、部屋に入った瞬間、充満していた暖かくやさしい匂いが俺の鼻と食欲をくすぐった。
(……この匂いは……海老ピラフか?)
海老ピラフは母さんの料理が得意な母さんの中でもさらに得意の位置に属する料理だ。
なんでも単純にご飯を具材と炒めるのではなく、ご飯を炊く段階から独自の作り方があるらしい。
「……ん?」
ふと見ると、リビングには俺と雪をあわせて5人いた。
うちはもともとみー姉、母さん、親父、俺の4人家族で、この家には俺を-して雪を+した4人が住んでいた。
ちなみに、雪の両親ももともとはこの家の使用人で一緒に暮らしていたらしいが、かなり前に他界している。
その話は俺の両親が亡くなった話にもつながっているのだが……まぁ、それはおいおい話していこう。
今言いたいのはそんなことではなく、みー姉が二階で寝ている今、ここに5人の人がいるのは不自然だということだ。
「ごめんなさいね、相変わらず騒がしい家で……」
「いえ、そんな……」
苦笑交じりに母さんと話している謎の5人目の人物は……
「風見山? 来てたのか?」
「ああ、お邪魔している」
リビングの6人用、長方形型の机に座っていた風見山は俺を一瞥した。
「せっかくだからと思って、私が呼んだんですよ」
「ふーん」
母さんの補足説明に適当にあいづちをうつ。
家族ぐるみで付き合いがある風見山がうちにご飯を食べに来るのは来るのは別段、珍しいことじゃなかった。
むしろ、風見山が一人で来ているほうが珍しい。
いつもは風見山のおじさんもきてうちのおやじと朝まで騒いでいるのだが……
「おじさんはどうしたんだ?」
「お父様は居残り稽古だ」
「……相変わらず、せいが出ることで」
おじさんは弟子の育成に非常に熱心で、よく通常稽古の時間外に無償で稽古をつけることがある。
「何を人ごとにようにに。お前も昔は受けていたのだぞ」
「まぁ、そうなんだが」
まだ、俺が小さい頃。それこそ両親が死んで新井家に引き取られてすぐこことである。
当時、泣いてばかりだった俺を親父が無理やり風見山の道場に無理やりたたきこんだのだ。
精神を鍛えるためだとかなんだとか……
その時、親父は俺に『風見山んとこに、一人娘がいる。その子に勝利したら道場をやめさせてやろう』という約束をした。
といってもその頃の俺は『同じ歳の女の子』としか聞いておらず。
絶対に勝ってやる! となめきっていた俺は(以下略)
「なんならまた道場に戻って稽古をつけてもらうか?」
「遠慮しとく」
俺が風見山に勝利できたのはは中学も半分と少し終わったころだった。
情けない話、それまでは全敗していた。
それに、勝ったといってもあのときの勝利は俺の運がよかっただけだ。詳しくは話したくないが……
「ふふ……そう言うと思った」
「……なぜ不敵に笑う?」
「ん? お前をたおし、また道場に連れ戻すのが私の今の目標であり、私が強くなる理由だからな」
「全力で遠慮したいのだが……」
俺は風見山に聞こえないぐらいのげんなりとした声でつぶやく。
「そ、そしていずれかは……わ、私と一緒に道場をついでもらう!」
将来の夢を語るのが恥ずかしかったのか風見山の顔は少し赤くなっていた。
「勘弁してくれ」
道場をやめて以来、風見山は何度も俺に勝負を挑んできたが……俺はすべて逃げ回っている。
当たり前だ。道場をやめて2年近く、いま本気でやりやったら確実にとられる。
「む、勘弁とは何事だ! お前は……私の……その……い、許婚なのだぞ!」
「しかし、その許婚の話は無理にしたがうものではないはずです」
なぜか俺と風見山の会話にバーゲンセールに群がるおばちゃん並に無理やり入り込んで答えたのは雪だ。
「……水無月には関係ないだろう」
「関係はあります。雪はご主人さまの専属メイド。ご主人さまが風見山家にゆかれるのなら愛人の雪もご一緒させていただきますから」
お互いを睨みあう風見山と雪。いや、まぁ、雪のほうはいつもの鉄仮面だが。
と、いうか
「おい、こら。誰が愛人だ」
「失礼。噛みました」
「違う。わざとだ…………」
「失礼。かみまみた」
「…………どっかで見たことのある会話だな」
「雪は道に迷ったことはありませんよ」
言葉だけ聞いていると雪は俺と会話しているように聞こえるが、目はしっかりと風見山と火花を散らせていた。
なんというか、この二人は相性がすごく悪い。いつもこんな感じで対立ばかりしているのだ。
性格が合ってないとかそういうわけではなさそうなのだが。いったい、何がわるいのやら
「お前らは……もう少し仲良くはできないのか」
「…………ご主人さまは馬鹿ですね」
「それについてはまったくもって同感だ」
「な、なんだよ……」
なぜが二人から梅雨のようなジトッとした目で睨まれてしまった。
「はいはい、そこまでです。せっかくのあたたかい料理が冷めてしまいますよ」
居心地の悪い空気から俺を救い出してくれたのは絶対神ことお母様だ。
母さんは続けて俺に問う。
「信也、美羽はどうしました?」
親父の興味がこちらに向いたのか、ひとりで日本酒をあおいっていた手がとまった。
「寝てたから、二階の部屋に運んできた」
「もう、あの子は……まだお風呂にも入ってないのに」
「生徒会活動でつかれてんだろ。少しだけ寝かしてやったら?」
「よもや、貴様が面倒をかけれるのではあるまいな?」
「……まさか」
「ならいい。迷惑をかけるのは親だけにしておけ」
そう言って満足したのか、親父はまた日本酒をあおり始めた。
風見山から熱い視線(たぶん怒りで)を受けてる気がするがスルーすることにする。
「まぁ、先に食べてしまいましょう。美羽は後でおこしにいきます」
「そうだな」
俺は一番近くだった風見山の隣に座ろうとして
――ガシッ――
雪に腕を掴まれた。
「ご主人様は私の隣に座ってください」
「ん? まぁ……いいけど」
ちなみに、使用人である雪が同じ食卓でご飯食べるのはうちに食卓では普通のことなのでだれもツッコまない。
俺は雪に誘導されるがままに風見山の向かいの席に移動
――ガシッ――
作品名:学園を制し者 第五話 作家名:hirooger