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CROSS 第12話 『救出』

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第3章 外へ



「オレに助けてもらったと言いふらされたくないから、今オレを助けているんだろ?」
山口は出入口に向かって妖夢と歩きながら、彼女にそう言った。また石材が落ちてきて、小石と砂ぼこりが舞った。
「……どういう意味ですか?」
「本当はここに捨てていきたいと思っているんだろ?」
「そんなこと思っていませんよ!」
「どうかな?」
「……なんでそんなに被害妄想なんですか?」
「…………」

 そして、なんとか出入口の扉をくぐった。出入口の向こうは、急ごしらえの駐車場になっており、軍用トラックなどの残骸が放置されていた。幸い、辺りに敵の姿は無かった。山口と妖夢が、建物から30メートルぐらい離れたとき、建物が一気に崩れていった。建物の一番近くに放置してあった軍用トラックの残骸の上に石材が落ちて、爆発した。山口と妖夢のすぐ横を破片が跳ね飛んでいった。そのすぐ後、また砂ぼこりがやってきて、妖夢の服をまた汚した……。

 山口と妖夢は、駐車場の詰所で休憩することにした。彼はポケットから救急キットを取り出し、それで右足の切傷を治療することにした。彼女はカード型通信機でどこかと連絡を取ろうとしていたが、やはり繋がらなかったようだ。
 詰所の壁にかかる時計は、朝8時ぐらいだと教えてくれた。この世界への核攻撃まで、あと4時間を切っている。

   ピー! ピー! ピー!

 そのとき、山口のバッジ型通信機が鳴り始めた。山口は、辺りを見渡して安全を確認すると、通信を始めた。
「こっちの問題は解決できたぞ」
『……それはちょうどよかったです。救出地点が決まりましたので、そこに移動してください』
「わかった。どこだ?」
『そこから、直線距離にして南東8.2キロの方角の地点です。この世界では『嵐の祭祀場』と呼ばれる場所です』
「……おいおい、ここから2、3時間はかかる場所じゃないか!」
山口は少し怒り出しながらそう言った。
『安全に着陸できる場所はもうそこしか無いんです。もう我々ぐらいしか残っていないんですから』
「……もう本隊は撤退したんだな」
『ええ、山口さん。今残っているのは、私たちとCROSSの半分の隊員と、従軍記者1人だけです』
「なるほど……。しかし、どうやってそこまで行けばいいんだ? 直線距離で8キロぐらいあるんだぞ?」
『……山口が今いるのは、駐車場ですよね? 近くに車はありませんか?』
ヘーゲルは、山口の特殊ゴーグル(少し明るくなってきたので、妖夢は山口にそれを返した)の発信機で、山口の現在地がわかっているようだった。
「中古車としても売れそうにないくらいボロボロの車ばかりだけどね。ロボットだから悪魔たちに破壊されているようだ。」
『ロボット仕様じゃない手動式の車なら動くのがあるかもしれませんよ』
「探してみないとわからないぞ」
『とにかく探してみてくださいよ』
「わかったわかった」
『それでは待っていますので、早く来てくださいね』

 そして、通信が終わった。