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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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7.



 ――暗転。
        漆黒。

 どれくらい時が経ったのだろう。
 一分?十分?一時間?一日?
 それとも――もう。

               ――暗闇。
     暗黒。

          ――光。

 ――脳幹から脊髄にかけて、静電気が弾けたような、微弱な刺激が走った。
(…あたたかい……)
 感じたのは温もりだった。
 よく知る、なつかしい温かさ。
自分の体を優しく包み込むような、母の胎内のような温もりを。
 これは間違いない。
間違いなく――

 ――瞼を開けた。
 見開いた目に飛び込んできたのは、ミミリがよく知る顔だった。
「ミミリ―――!」
「…ツツジ!?」
 自分の名を呼ぶ古馴染みの、よく聞き知った声に思わず涙腺が緩んでしまい、ミミリの声は涙に濡れた。
 瑠璃色の髪とAQUA―Sに身を包んだ少女――自分と同じ遺伝子を持つ片割れの姉妹。
 気が強くて気丈で、時にきつくてつっけんどんで、でも優しい女の子。同い年の幼なじみ、ツツジ・C・ロ―ドデンドロンの姿がそこにあった。
 運命とはなんと数奇なことか。よりにもよって、こんな時に彼女をよこしてくるなんて。
 この偶然の必然が起こした奇跡に、ミミリは涙と歓喜を禁じ得なかった。
 二人は、言葉を交わすよりも先に、互いの温もりを確かめ合いたくて抱き締めあった。
「ツツジ!ホントにツツジなんだね。ウソじゃない?夢じゃないよね!?」 
「ったく、あったりまえよ。夢でも幻でもないわ。触れるでしょ?温かいでしょ?アンタのよく知るツツジさんでしょ―が」
「うん、ほんとだ。ほんと…ほんと温かい。間違いなくツツジだよぉ―」
 ミミリの目から、ほろりほろりと涙が溢れた。
「全く、このバカミリ。思いっきりトラブルに巻き込まれて。取り返しが付かなくなるから、あれほど一人でプランタリアから出るのは控えろっていったじゃない。ただでさえ、不幸引き寄せ体質なんだから」
「うん…ごめんなさい」
「まったくよ。アホ…!ニブチン……ッ!もう…二度と会えないかと思ったんだからね…」
そう言ってツツジは俯いて、ミミリの両肩を掴み、感極まった様子で肩を震わせた。
「…全く、いつもいつもアンタは…」
 ミミリは違和感を感じた。気のせいか、自分の肩を掴むツツジの手に力が入っているような気がしたからだ。
 ツツジが顔を上げる。
「ひぇぇっ…!?」
 顔を上げたツツジを見て、ミミリは戦慄した。そこにあったのは――
「全くいつも、いつも!後先考えずに行動して、人に迷惑ばかりかけて。いらないことして、余計な仕事や手間ばかり増やしてさぁッ!このトラブル製造機のオッチョコチョイ!私がどれだけ怒ってるのかわかってんの!?」
 怒りの面を顔に被ったツツジが、一気呵成に捲し立てた。
「あ…あぅ…」
 ツツジの迫力に押されて、口をあわあわさせるミミリ。
「まだバ―ベナで暮らしてた頃。あの時だってそうよ。入ってくるなって言ったのに、キ
ッチンに入ってきて。人がお菓子作ってるその最中にすっ転んで、小麦粉ぶちまけてさ。
しかも、丁度良くコンロに火をかけた瞬間によ。それでアンタ、慌てて能力を使って風を
起こして、小麦粉を片付けようとしたのよね。それで、”どうなったんだっけ”!?」
「え―と…余計に散らかってお掃除大変でした?」
「ちがう」
「スカ―トがめくれた拍子に、履いていたパンツがなぜか脱げていた?」
「アウトー、不正解ッ!」
「あで!」
 ずびし!と、ツツジのチョップがミミリのおでこに刺さる。
「頭の悪いお下劣ラブコメか!それに、そん時はスパッツだったわよぅッ!アンタ、漫画の読み過ぎよッ!」
「はへぇぇーー…。い…一体どういうことなんですかぁー…」
「…ふっ…くく…。ねぇ、アンタ。わざとトボケてない?」
 ミミリは至って真面目に答えているつもりだったが、ツツジの機嫌はますます悪くなるばかり。今にも血管が切れて、血が吹き出そうだ。
 それを見てミミリは『ひぇぇ。違う、違うよ』と困惑した様子でかぶりを振った。
それから『んぇ〜』と半秒ほど黙りこんで、昔の記憶を掘り返してみる。
「え…ぇえ―と…じゃぁ、”粉塵爆発でドカ―ン”?」
「゙あ…?」
 一気にツツジの表情が陰りを増した。
「あれ?ち…違う??え…えへ。で…ですよねぇ〜」
 普通に考えれば一番あり得なさそうな答えだった。
「そのとおりよ…」
「え?」
「ドカ―ンよ、ドカ―ン!銀河ハリウッド映画さながら派手にねぇぇーーー!!」
 大当たりだった。
 件の状況は、見事なまでに粉塵爆発を引き起こす条件が揃っていたのだ。
 おまけにツツジの怒りも更に爆発していた。
「よくも人ん家のキッチンを吹き飛ばしてくれやがったわよねぇ!お蔭で暫くの間、”風を
起こして小麦粉を片付ける必要もないくらいに、非常にキッチンの風通しがよくなった”わよぅッ!」
「いやぁ、そんな。壁に穴が開いてヤバイなーとか思ったけど。そっかー、役に立っててよかったよー。またやってあげるね(はぁと)。あいだ!」
 ミミリの頭にツツジのゲンコツが炸裂した。
「がぁ――ッ!誰も礼なんていってないわよぅッ!このスカタンッ。つーか、どこの世界に進んで自宅のキッチン吹っ飛ばされたい物好きがいんのよ!ドMの極地か!金銭的な意味で」
「え?違うのツツジ。『便利になって良かったぁ。ヤッピー♪』ってことだよね?」
「ちがうわよッ、このバカミリ。どんな解釈の仕方よぅッ」
 ミミリは、本気で解らないと言った様子で、不思議そうに首を傾げる。
「ん〜?じゃぁ〜、でもそれなら、何に対して怒ってるのツツジ。無闇に怒るのは体に毒だって、お母様も言ってたよ?脳細胞も減るし、人間関係も悪くなるし」
「あんたが言うか…!」
「えぇー?ツツじー、いい加減気を納めて下さいよぉー。さっきから意味が分かりません」
 どういうことなのだろう?
 自分のお蔭でキッチンの環境がよくなったのに何故怒る必要があるのだろうか。
 全く意味が解らない。情緒不安定なのだろうか。
「つか、なに怒った方がバカで大人げないみたいな空気作りしてんのよ!
『大気を操れるフリ―ジア属だけにぃ、”場の空気”も作れますぅ〜』
なんて上手いこと言ってるつもり?全然上手くないわよぅ!」
「ツツじ―」
「なによ?」
「つまんないです」
 眉毛をへの字にして、本気で面白くないという顔をするミミリ。
「やっかましいわ、アホ!嫌味で言ってんのよ、解りなさいよ!さっきからね、アンタがマヌケやってキッチンを吹き飛ばした原因を作ったことを怒ってんのよ。わ・た・し・は!」
 ムキーッと、地団駄を踏むツツジ。
「おぉ、なるほど―。ごめん、文面を素直に受け取ってたよ―。もう。ハッキリと言ってくれればいいのにぃ。ほんと周りくどいんだからぁ」
 カラカラと笑うミミリ。
 それに対し、ツツジはすっかり毒気を抜かれたようで。
「ハァ…もう怒る気も失せたわ。さっきからそう言ってるじゃないのよ…」
「いやぁ、その節は本当に失礼しました」
「いいわよ。…ったく、アンタって奴は、ホント天然さんなんだから」