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夢と現の境にて◆参

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―――漆,過去の夢




「憂」

机で読み物をしていると、背後からばあさまの声が聞こえた。相変わらず気配が感じられず、少しビックリしてしまう自分がいる。一緒にいて長いというのに、どうもこういうことには慣れない。

「なんでしょう、ばあさま」

身体を反転させ、ばあさまの方を見れば、室内にいるときとは違う、外出用の着物になっていた。

「お出かけ…ですか?」
「ああ。千代の親のところにいってくる。…暇ができたと聞いてな。月に二回行っても構わんじゃろ。」

厳しい顔つきでいうばあさまに、苦笑を返す。ばあさまは相当頭にきているらしい。そういえば千代を預かってから、何年経っただろう。思い出せないくらいだ。千代の両親に会ったことはないが、薄情なのは連絡のなさから感じられた。

「憂、少し買い物を頼む。メモに書いておいた。今日は帰らんから適当に自分で作って食え。」

ばあさまはそういって紙切れを俺の方へとヒラヒラと舞わせると、踵を返して行ってしまった。こう、なぜばあさまはクールなのだろうか…。今始まったことではないが、不思議に思う。とりあえず、紙切れを拾い見てみれば、殆ど野菜類。ばあさま、ほんとに肉買わないよな…。どうせ今日は一人なのだ。豚肉でも買って野菜炒めにでもしてしまおう。

外に出かけられる服装に着替え、買い物用のバックを肩にかけ、家の戸締りをした俺は、近くのスーパーへと出かけた。最近行ってなかったので、少し不安感がある。外に出ること事態あまりないので、時々知らないところに来たみたいに怖くなることがある。こういうのはヒッキーとか…、そういう類に似ているのかもしれないが。俺は体調とか、特に出かけるところがないからで…

そうくだらない言い訳を考えていると、急に虚しくなった。夏休み中は、間宮と殆どゲームをして遊んだんだっけ。不意に、最近出かけたのはいつだったか思い出すと、その事を思い出した。そういえばあいつは俺に外に出かけようとは言わなかった気がする。まさか気遣っていたのだろうか…
話を聞く限り、友達と外で出かけていると聞いたことがある。外に出かける自体嫌な訳ではないだろう。じゃあ…

そんなことを考えていると、スーパーについていた。やはり人が沢山出入りしていて少し嫌な気持ちになった。しかし、そんなことも言ってられないと、頭を振り、俺は堂々とスーパーの中へ歩を進めた。

最初に買わねばならない物を、紙切れを見ながら籠へと入れていく。流石に野菜が多いだけあって、どんどん重さが増えていく。こんな量で疲れてしまう俺はきっと高校性の端くれにもおけないだろう。そんな悲観的な事を考えていると、突然、肩を誰かに掴まれた。驚いてそちらを見ると、私服姿の間宮がいた。手には、俺と同じように買い物籠をぶら下げて。

「なんで…、こんなとこに」
「なんでって、夕飯の買出しに決まってるだろ」

籠を持ち上げながら呆れたように言う間宮に、そうだった。とバカっぽい返事をしてしまう。間宮は俺の籠の中を覗くと、不思議そうな顔して野菜ばかりだな、と笑った。俺は、ばあさまに頼まれたんだよっとムキになってそう言い返すと、間宮は成る程な、といった様子で頷き、不意に出口の方を見ると

「買い物終わったら一緒に帰ろう。俺先行って待ってる」
「お、おい」

俺の返事も待たず、間宮はそう言うとレジの方へ向かってしまった。くそう…、なんだか自分だけ意識しているみたいで悔しいな。颯爽と歩いていってしまった間宮の背を見て思う。あれから普通の、今まで通りの関係…になったが、間宮は俺の返事をあまり期待してはいないようだった。なんの最速もない。今まで通りの対応、今まで通りの会話、表情…。俺が気づいていないだけかもしれない、けど。
なんだか期待外れというか…、がっかりしてしまっている自分がいるのだ。それに気づく度、自分を叱咤していた。間宮は俺のことが好きなのだ。その事実に浮かれてしまっている自分がいる。間宮が諦めてくれるのを待つのだと決めているのに。そして、そう思うからこそ入れなければいけない、一番手っ取り早い方法をなぜ選択肢に入れてないんだろう。なぜ…
俺は強く、自分の唇を噛み締めた。これが今の、自分の精一杯なのだと、知りたくなかった。

作品名:夢と現の境にて◆参 作家名:織嗚八束