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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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Episode.14 迷子と子供




待ち合わせ場所である噴水の前に鬨がついた時、ヴェクサはもう既にそこに居た。
噴水の端で足を組んで座っている様子はなかなか絵になっていたが、鬨としてはそんなことはどうでもよく、また興味のないことだった。

「よっ」

そう言ってこちらに気が付いたヴェクサが片手を上げる。
鬨が近づいてくるのを見て立ち上がったヴェクサは、鬨の顔を見てギョッとした。

「おま、なンか顔色悪いぞ?」
「そうか?」
「あぁ」

自分では気づいていないらしい鬨の額に、掌を乗せてみる。

「ン?冷たい?」
「あんたが暖かすぎるんだろ」

大人しくそれを甘受していた鬨が、ヴェクサの手を額から剥がす。

「俺は何ともないけど」
「でもなンか顔色悪いぞ?」
「白いのは元からだ」
「いや、そうじゃなくて、なンというか・・・蒼い?」

研究所で見たほどではないにしても、昨日の健康だった時に比べると一目瞭然だろう。
今日は連れ出さずに休息をさせた方が良かったかもしれないと、後悔をし始めているヴェクサに対し、鬨は特に気にした様子もなくヴェクサの目の前に立っている。
そこに儚いなどと言う文字はなく、むしろこの状態の鬨でもヴェクサは負けてしまうだろう。

「今日はあンまし動かねぇほうがいいな」
「は?いや、別に俺は・・・」
「いいから、俺の言う事は聞いとけって」
「・・・・・・・・」

はぁ、と溜息をついた鬨は、諦めたように「わかった」と頷いた。
ヴェクサも「ン、よし」と満足げに頷き返した。

「ンじゃ行くか。今日は近場の散歩だな」

あまり動かないほうがいいと言っていたのに、散歩は行くのか。
とは言わなかった。

「なんでもいいが、また暴走するなよ」
「?俺、暴走なンかしたか?」
「・・・・・いや・・・」

歩きながら、鬨は早くも脱力感を感じていた。
これではそのうち、また一人で何処かに走り出しそうだ。よく見張っておこう。

鬨は溜息を吐いて、肩を落とした。
なんだか調子を狂わされっぱなしだ。放っておけばいいとは思うのだが、なぜかいつの間にか世話を焼いてしまっている。なぜだろうと考えるが、理由が思い浮かばない。

「鬨?」
「なんだ?」
「いや、ボーっとしてるみたいだったから。そっち、なンもないぞ」

見れば、民家だろう。住宅街らしき景色が目の前に続いていた。

「店とかがいっぱい並ンでンのはこっちだぜ?」

ヴェクサが指差しているのは鬨が行こうとしていた方向に90度それた曲がり道だった。
自分らしからぬ失態に、やはり今日は宿でゆっくりしておいた方が良かったかもしれないと今更に思った。

「鬨でもそンな失敗することがあるンだな」
「当たり前だろ。俺だって人間だ、完璧なわけじゃない」
「ま、そりゃそうか」

カカカ、と笑って、今度こそ正しい道を歩いて行くヴェクサの後姿を追う。
遅れた分早足になって追いつけば、ヴェクサがまだ笑っている事に気が付いた。いや、こいつはたいていこんな顔をしているが。

「そんなにおかしいことか」
「あぁ、気ぃ悪くしたンならすまねぇ」
「いや、気にしてない。何がそんなにおかしいのかと思って」
「ンー・・・ちょっと違うな。おかしいンじゃないンだ」

「じゃあなんだ」と、そう問えば、ヴェクサは少し困った顔になった。忙しいやつだなと思ったが、これも今更な気がする。

「そうだな・・・・たぶン、嬉しいンだな」
「嬉しい?なにが」
「それは言わねぇ」

男のルンルン気分を見ても何にも楽しくなかったが、とにかくヴェクサは楽しそうにそう言った。訳がわからない。

「まぁ、気にすンな。ほら、それより散歩を楽しもうぜ」
「・・・・・・あぁ・・・」

言って歩き出そうとするヴェクサは、無意識のうちに鬨の手を取っていた。
鬨は何事かとヴェクサの顔を見上げるが、後ろを歩く鬨からはヴェクサの顔が見えない。
だが、

「この先にさ、超うまいパン屋があるンだ」
「・・・・・・・・・そうか」

その様子は、どう見てもはしゃぎながら母の手を引っ張る小さな子供それだった。
本当にこの男は25なのだろうか。いや、この際年齢は関係ないのかもしれない。
つまり問題は精神年齢だ。

楽しそうに人をぐいぐい引っ張っていく目の前の男に、鬨はこの時諦めの様なものを感じたという。