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Juno は きっと微笑んだ

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JUNOの女神はここにも



朝から心配してたけど、なんとか1日雨はふらずにいけそうだった。
教会の大聖堂は隼人さんと麗華さんをお祝いする人でいっぱいで、その中で式は滞りなく進んでいた。祭壇のいつも悲しそうな十字架を背負ったキリストも節目がちなマリアさまも、今日はにこやかな笑顔のようだった。
パイプオルガンの音にあわせて、直美と賛美歌を歌っていた。うれしそうな顔があっちこっちに広がっていた。

「これで お終いかなぁ・・」
今日のために買ってきた花柄のかわいいワンピースを着た直美に顔を覗き込まれて聞かれていた。
「えっと、これからステファンさんが祝福でお終いかな」
「うん、そっか、きれいだねー ウエディングドレス・・もうちょっと前のほうで見たかったなぁー」
「順番あるんだから・・友達は後ろのほうでいいの・・静かに聞かないとステファンさんに怒られるから・・」
ステファンさんが十字を切って祝福を2人とみんなに与えて、お祈りの言葉を話し出していた。
「天地の造り主なる神、今この兄弟と姉妹とが、主のみ前で約束をしたことを感謝いたします。どうか、言葉をもって約束したことを誠実ならしめ、み教えに従って、主の豊かな恵みに答える者とならせてください。ここに形づくられるあたらなる家庭を祝福し、教会の聖なる交わりにつらなり、互いに愛し、互いに仕えつつ、与えられた使命をまっとうすることを得させて下さい。私たちの主イエス・キリストのみ名によってお願いいたします。アーメン」
「アーメン」
大聖堂に標準語のステファンさんの声がおごそかに響いて、それに答えた声も静かに喜びの響きだった。
パイプオルガンの音色が聞こえ出すと振り返った隼人さんと麗華さんが腕を組んで赤い絨毯の上をこちらに向かって足を進めていた。
「わぁー やっぱり、綺麗ねぇー うれしそうだねぇー 麗華さん」
「うん」
隼人さんは緊張した笑顔を浮かべていたけど、麗華さんはあふれんばかりの笑顔を見せて小さく頭を下げて挨拶をしながら歩いてきていた。
「おめでとうございます」
直美と一緒に声をかけて目が会うと小さく笑顔を返されていた。

「ここでするの・・」
聖堂の外に出るとライスシャワー用のお米が入った白い包み紙を渡された直美に聞かれていた。
「うん、そうじゃない・・すぐに出てくるよ、きっと・・」
「そっかぁ・・すごーく結婚式良かったね」
「そうだね」
外に出ると、親族も多かったけど、大学の友達とか海の友達とかたくさんの人であふれていた。友達の大場も夏樹もおめかしして顔を見せていた。
「直美ぃー ブーケ狙ってるのぉー」
「夏樹さぁ、こんなにいるんだよぉー 女の子・・大変だよぉー」
麗華さんの友達が外にいっぱいだった。
「うーん そこをなんとか・・」
「目の前に飛んでくるかが問題ね、きっと・・」
「投げてくれないかなぁ、わたしの所に・・」
「夏樹さ、ブーケって後ろ向きに投げるんだから、どこ行くかわかんないよ」
「ジャンプして取っちゃおうっと・・」
「そこまでするんだ・・夏樹」
「しますよー」
大場と並んで二人の会話を聞いていた。

歓声があがって、大きな聖堂の扉が開いて隼人さんと麗華さんが姿を現していた。
2人が並んで頭を下げると一斉にライスシャワーの雨が振っていた。直美も俺も喜んで少し離れたところからだった。
「さぁー ブーケ投げるよー いくよー 」
ライスシャワーが終わると、麗華さんが女の子に向かって大きな声だった。
夏樹に引っ張られて直美も一緒に女のこの輪の中だった。
ブーケが空中に投げ出されていた。
小さな放物線を描いたリボンの付いたブーケはいくつもの伸びた手をすり抜けると直美の頭に当たって手にあっさり収まっていた。直美がビックリした顔でそれをつかんでいた。
歓声とため息が揺れていた。
「直美ちゃんかぁー 良かったねー 」
麗華さんが振り返ってうれしそうな声をだしていた。
「ありがとうございます、麗華さん、お幸せに・・すごっく綺麗ですよ」
「うん、ありがとう」
直美の手に色とりどりのかわいいブーケだった。花を抱えてうれしそうな顔をこっちに見せていた。
「はぃ、夏樹・・」
「えっ・・」
「半分あげるね・・全部はダメね」
隣に立っていた夏樹に直美が手にしたブーケを差し出していた。
「いいのぉー 直美」
「うん、あとで、綺麗に半部ずつ分けようよ」
「うん」
「ほら、ここにかわいいよ」
直美が花を1つ抜いて夏樹の胸に挿していた。
「ありがとぅ、直美」
笑顔の2人だった。
6月の女神は、もちろん花嫁の麗華さんに微笑んで、直美にも夏樹にも微笑んでいるようだった。

それから、ステファンさんが「後で2人が作ったかわいいお墓の柵を見てやってやぁー」っていつもの関西弁で言ったから、ほとんどの人間がお墓の周りに移動していた。
出来上がって2ヶ月ほど立っていたけど、かわいいらしさはそのままだった。お墓まできれいに掃除されていた。叔母に聞いたけど、それはステファンさんと若い神父の林さんが前の日に掃除したものだった。青い目の変な関西弁のおじーちゃんもなかなかだった。
きっと六月の女神と言われるJunoも遥か離れた日本のここで、今日は大忙しでたくさんの人を笑顔で見ているはずだった。
もちろん直美と俺にも笑顔を見せて見守っていることを祈っていた。
腕を組んでいた直美の頭には小さなブーケの花が1つ飾られていた。




   「Juno は きっと 微笑んだ 完」

  お付き合いくださりありがとうございました。次回作は未定です。
  連載が始まりましたら、また お付き合いください。
  ありがとうございました。