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Juno は きっと微笑んだ

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4月の日曜日


教会に直美と自転車で朝早くから来ていた。
隼人さんと麗華さんの柵作りをやっと手伝う日だった。
朝から暖かな日曜で、やっと春が来たって感じだった。
「お祈りしてからなの・・」
聖堂内では日曜礼拝がもう始まっているようだったから直美に聞かれていた。
「いや、苦手だから・・いいや、ステファンさんとか話長いぞぉ、きっと・・」
「ちょこっと顔出せばいいのに・・」
「抜けるタイミング難しいんだぞ、けっこう」
「ま、いいけど、劉が言うなら・・」
「今日は、隼人さんの手伝いだから、教会はいいんだって」
面倒だったから、直美の手をとって、教会の裏手のお墓に向かって歩き出していた。
「静かだけど、もうやってるのかなぁ・・」
昨日買ってきた、白い軍手をはめながら、直美に聞かれていた。
「どうだろね、来てるんじゃないかなぁ、どれくらいできたんだろ」
「だいぶ出来てるかもよ」
「まだ、でも今日で4日めぐらいじゃないのかなぁ」
計算したけど、日曜日だけの作業なら、たぶんそのはずだった。
「劉がこの前見たときはどうだったの・・」
「まだまだって感じだったけど・・」
2週間前に見たのが最後になっていた。
「そっかぁ」
「うん」
返事をして、教会の角を曲がると、作業着姿の隼人さんが見えていた。
その向こうに、すっかり形になったお木の柵が出来上がっていた。
「わぁ、出来てるよ、劉・・」
「うん、びっくり」
直美に言われる前から俺も驚いていた。
「隼人さーん おはようございます」
離れていたから大きな声を出していた。
「おぉー なんだ、来たのかぁ、直美ちゃんも」
「おはようございます、手伝いにきたんですけど・・」
隼人さんにこたえて、直美も大きな声を出していた。
「もう、出来ちゃうじゃないですか・・」
近付いて、直美と2人で柵を眺めていた。
「まだ、入り口の飾りをつけないと、それにペンキ塗らないとな・・」
「なんか、早かったですね、まだまだかと思って手伝いに来たんだけど・・」
「先週はずっと、ここに来てたから・・ほら、今月からは親父の会社のれっきとした社員になっちゃったから、日曜もどうなるかわからなかったから、3月いっぱいで出来上がればよかったんだけど、そう、うまくいかなくてさ」
「そうですかぁ」
直美と一緒にぐるっと柵の周りを歩きながら、隼人さんと話をしていた。
「麗華さんは、今日は来てないんですか・・」
直美が隼人さんにだった。
「いや、いま、教会に行ってる」
「えっ 中にいるんですか、麗華さん・・」
「毎週、日曜のミサは少しだけでてるんだよね・・」
「そうあんだぁ・・じゃぁ、わたしもちょっとのぞいて来ようかなぁ、いいかな、劉」
午前中に直美もあまり教会に来てない筈だったから久々のようだった。
「うん、いいよー」
「じゃぁ、行って来るね」
直美が軍手をはずしてジーパンのポケットにきれいにそれを入れながら、聖堂の表の入り口に向かって歩き出していた。
「直美ちゃんも手伝ってくれるのか、今日・・」
「そのつもりできたんですけど、何すればいいですか、俺たち」
「そうしたら、悪いんだけど、下地のペンキ塗ってくれないかなぁ」
「いいですけど、やった事ないですけど、いいですか・・」
ペンキなんて本格的には塗ったことなんか全然なかった。
「そこの白いの塗るだけだから、大丈夫だろ・・まっ 俺もペンキはちょっと苦手だけどな・・それより、服とかに色つけるなよ」
「あ、それは、大丈夫です、俺も直美も汚れても平気な服で来ましたから」
「そうか、なら、いいや」
「じゃぁ やりますね」
「そこの パレットにペンキ移して、そこのローラーで入り口以外を端からやってくれるか」
「はぃ、では、頑張ります」
「うん、俺は、こっち作っちゃうから・・」
手に木材と、電動ドライバーを持った隼人さんに言われていた。
パレットに白いペンキを缶から移して、小さいローラーと大きなローラーを2個持ってお墓の裏手から始める事にした。裏側から始めれば、ミスってもいいかなって、そんな考えだった。

「こんなんでいいですかねぇ、隼人さん、ちょっと見てくれませんかぁ」
少し塗って心配だったから、お伺いをたてていた。
「いいんだって、大丈夫だろ・・どれどれ」
「こんな感じですけど」
「おっ うまいじゃん、充分だよ、俺がやってもこんなもんだな、きっと」
「良かった・・」
ちょっとほっとしていた。
「あっ 隣の親戚の叔母さんな、良くしてくれるんだわ、お茶とかお菓子とか・・」
「えっ、そうですか・・」
「そこのお墓も息子さんなんだってな、それも、一人っ子だったらしいなぁ・・気がつくと毎日、お花とかが変わってるんだよなぁ・・」
隣とはいえ叔母らしかった。
「同い年でよく遊んで、夏休みとかは田舎から良く隣に泊まりでずーっと来てたんですけど、亡くなってからは叔母に会うのってなんかイヤで、ずっと会ってなかったんですけどね」
「そうか・・でも、いまは良く来てるんだろ・・」
「はぃ、年数たったし・・」
「そうだな」
「あとで、顔出さないと怒られそうだなぁ・・」
「うん、出しとけよ、じゃ、そのまま、塗ってくれや、ゆっくりでいいぞ」
「はぃ」
隼人さんに返事をして隣の家を見たけど、叔母も叔父の姿も見ることは出来なかった。

「ごめん、隼人、遅くなっちゃった」
麗華さんと直美が戻ってきていた。
「直美ちゃんと 賛美歌歌ってきちゃった」
「はぃ、1曲だけだけですけどね」
直美が笑顔で返事をしていた。
「さっ、隼人、何をすればいいかな」
「劉といっしょに、みんなでペンキ塗っちゃってくれるかな、今日中に終わればいいから、のんびりでいいぞ」
「そっか、じゃぁ。直美ちゃんも一緒に塗ろうか・・」
「はい、頑張ります」
直美が外していた軍手を手にはめて、うれしそうだった。
「劉ちゃん、麗華たちに教えてあげてくれるかぁー」
「はい、わかりました」
教えるっていってもって感じだった。パレットは、もう1個しかなかったから、1つを麗華さんに渡して、俺と直美は一緒のパレットを使う事にした。
麗華さんは1人で右の横がわの柵を塗ることにして、直美と俺は一緒の裏側の場所を塗ることにした。
「それで、転がせばいいから」
直美にローラーを持たせて、説明していた。
「うん、こうね・・わぁ、おもしろい・・」
「そそ、つけすぎなきゃ いいよ」
「うん、こんな感じだよね」
「うん、いい感じ、あとは服につけないでね、落ちないからね」
「いいよ、汚れてもいいのを着てきたから・・へー おもしろいや・・でも、白だっけ、色って・・」
「下地だってさ、これ塗って、乾いたらきっと最後の色を塗るんじゃないかなぁ・・今日じゃないと思うよ」
予想だったけど、たぶんそのはずだった。
「そっかぁ、ねぇ、ここは塗っちゃいけないんでしょ・・」
言われたのは土台の石の部分だった。
「うん、でも、ほら、きちんと養生してあるから、ちょっとはみだして塗っていいよ、石は染まらないようになってるから」
「そっか、これはそのためか・・」
「そそ、べたーって塗らなきゃ下の石は染まらないから平気だから、あんまり気にしないでいいよ」
「うん、けっこう やっぱりおもしろいね」