小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Juno は きっと微笑んだ

INDEX|15ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

お昼は洋館で


教会の出口に向かって歩いていると、声をかけられていた。
「劉ちゃん、お休みなの・・」
叔母が隣の家絵の庭からだった。
「バイト中なんですけど、近くに物件紹介来たんで・・」
「あら、そう、お昼は食べたの・・まだならなんか作ってあげるけど」
「いいんですか・・ けっこう腹ぺこで・・」
「なら、寄ってきなさいよ、すぐに作ってあげるから」
さっきから 腹ペコだったから、願ったりだった。
「すいません、外からまわりますから・・今行きます」
笑い顔の叔母に頭を下げて、教会の門を出て、隣の家に向かって歩き出していた。

「あがっちゃいますねー すいません」
鍵は閉まっていなかったから、勝手に部屋に上がりこんでいた。
「はぃ、お茶・・ちょっと待っててね、時間ないんでしょ、すぐに作ってあげるからね。いそがしそうね、アルバイト・・」
「3月になったら、やっぱり学生とかで、けっこういそがしいですね」
もう、台所に叔母は立っていたから、少し大きな声で答えていた。
「そうね、そんな時期ですもんね、オムライスでいいかしら、なんにも無いから・・」
「すいません、突然で・・」
「いいわよ、すぐだから・・待っててね」
出された日本茶を飲みながら待っていると、教会の庭から隼人さんの電動工具の音がたまに聞こえていた。
どれくらいの日数がかかるのかは、まったくわからなかったけど、1週間に1日だけの作業だと、4月いっぱいはかかるのかなぁって思っていた。それにしても、土まみれになって寒空に麗華さんも手伝ってるのには、やっぱりビックリだった。
「ねぇ、叔母さん、隣の音うるさくないですかぁー」
立ち上がって、台所に近付いて大きな声でだった。
「うるさくわないわよ、だって、お墓をきれいにしてくれてるんだから・・」
「なら、いいけど・・あっ、日曜なのに叔父さんいないんですね」
「朝から千葉のゴルフ場にでかけたわよー」
「好きですね、ゴルフ・・」
「うまくないのにねぇ・・」
フライパンを手に振り返って笑っていた。
「なんか、ステファンさん 言ってましたか・・あの工事の事・・」
叔母が、どうも俺と隣の工事の隼人さんと麗華さんの事を知らないようだったので、気になって聞いていた。
「ステファンさんは、日曜日にちょっとうるさいけですいませんって・・それと若い人がが会社休みの日に作ってくれるんだって言って喜んでたけど・・」
「それだけですか・・」
「そうね・・」
やっぱり、叔母にも内緒にしているようだった。
「それから、出来上がりのきれいな絵を見せてくれたけど・・かわいくなりそうで、良かったわぁ・・ちょっと壊れかけてたから・・」
「そうですね、それは俺も見せてもらいました・・」
「でも、お顔みたけど、わたしわからなかったわぁ、あの2人・・最近入られた信者さんなのかしらねー」
ちょっと返事に困って、叔母の声を聞きながら、ステファンさんに呆れながら、ソファーに座りなおしていた。
「もう、すぐできるからね、スープがいいんだろうけど、お味噌汁で我慢してね」
目の前に叔母が、きゅうりのお新香と、大根の味噌汁を先に出してくれていた。
「すいません、ありがとうございます」
「オムライスとじゃぁ、変な組み合わせかしらね・・」
「いいえ、叔母さんのオムライスって忘れてたけど、小さい時食べておいしかったの思い出しました」
「あら、そうだったかしら、はぃ、どうぞ」
台所からもオムライスを持って戻ってきながら、笑顔の叔母だった。
「すいません、いただきます」
包んだタマゴ焼きの上からほんのり湯気が出ていておいしそうだった。
「久しぶりに作ったから、上手にできたかしら・・年寄り2人だけの家だからね・・オムライスなんてなかなか作らないから」
「いやー うまいです」
口に入れた、オムライスはすごくおいしかった。子供の頃にご馳走になったオムライスと同じかどうかは忘れたけど、ここで、口の周りを汚して叔母に注意されながら食べた記憶はよみがえっていた。
「劉ちゃんは、あの人達とお知り合いなの・・さっき、お話してなかったかしら・・」
「えっ、見てたんですか・・」
返事をしながら、どうしようかなぁーって考えていた。
「劉ちゃんみたいだなぁーって見てたら、声かけてたから、あの若い人に・・」
「うーん、ほら、この前話したでしょ、そこで結婚式挙げたいって頼まれてるんだって・・」
「えぇ、じゃあ、その人達なの・・」
「そう、鎌倉の海でお世話になった先輩なんですよ、2人とも・・」
オムライスをぱくつきながら 話をしていた。
「知らなかったわぁー やだ、劉ちゃんも早く言ってよ」
「なんか、ステファンさんが、あんまり かかわるなって顔するし・・でも、さっき、ここは親戚の家ってさっき麗華さんに話しちゃいましたから・・向こうは知ってます」
「そう、で、結婚式は挙げることになったの・・おとなりで・・」
「それが、ステファンさん、まだ、ダメとも、いいとも、はっきり言わないらしいですよ、それなのにあんなの作らせちゃって、何考えてるんだか・・」
「そう、お考えあるんでしょうけど・・」
叔母は自分にも入れた日本茶を飲みながら、うなづきながらだった。
「そりゃぁ、こっちもバカじゃないから、だいたい考えてる事はわかりますけど、まんがいち、それがハズレだったら・・」
「ハズレってのはないわよ、お考えあるんでしょうから・・劉ちゃんも想像はついてるんでしょ、ステファンさんのお考えになってることは・・大丈夫よ、心配しなくても・・」
なんだか、笑顔で諭されていた。
「でも、見せてもらった絵のようになったら、出来上がりたのしみだわね・・」
「そりゃ、俺もですけど」
叔母も口に出してはっきりとは言わなかったけど、ステファンさんの思惑はお見通しのようだった。
話しながら食べてたけど、お皿の上はもう半分以上オムライスの姿はなくなっていた。おいしくて あっという間だった。

食事をご馳走になって、叔母にお礼を言って、外に出ると1時半に近い時間になっていた。あわてて下北沢に帰らないといけない時間だった。
姿は外の道路からは見えなかったけど、隼人さんが操る電動工具の音が響いていた。
いつかは直美と一緒に手伝いにこようって考えていた。1日ぐらいは、わいわい楽しくしたかった。