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だいすきだいすき!に!

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だからおれのよめだってば!





「しずちゃんのあほおおおお!」
「いざやののみむしぃいいい!」
ぎゃーぎゃーと、まあ元気なのはよいことですが、煩いのはよくないことです。
またあの二人か、と帝人先生はため息をつきつつ、おゆうぎしつの中央でぎゃんぎゃんと言い争う二人組みを見た。杏里先生と正臣先生も既にスタンバイ状態、だが今回は臨也が涙目なので、ここは帝人先生の出番と思われる。
「あほっていうほうがあほなんだぞ!」
「じゃあのみむしっていうほうがのみむし!」
「のみむしはおまえであっておれじゃねえ!」
「そしたらあほはしずちゃんであっておれじゃないもん!」
「はい、ストップ!」
むぎゅ。
今にも掴みかからんばかりに近くで言い争っていた二人を、左右の手で抱きしめることでとりあえず止める。エプロンに押し付けられた口をもごもごさせながら、帝人先生に怒られるのは怖いのでとりあえず二人は黙った。
辛うじて二人とも凶器を手にしなかったのは、つい先日怒られたばかりで流石に反省していたからだと思われる。
「落ち着いたかな?」
しばらくぎゅむぎゅむと抱きしめてから手を離せば、臨也は恋愛的に真っ赤になりつつ、そして静雄は気恥ずかしさから赤くなりつつ、「はぁい」と小さな返事である。
「静雄君、今度は何が原因ですか」
杏里先生も帝人先生と並んでしゃがみ、問いかければ、ぶうっと頬を膨らませた静雄はびしっと臨也を指差した。


「いざやがうそつき!」
「うそついてないよ!」


即座に言い訳を返して、臨也はがるると静雄に牙をむく。それに睨み返しつつ、静雄はさらに続けた。
「うそつきだろが!みかどせんせとこいびとだってうそついた!」
「うそじゃないもん!らぶらぶだもん!」
「うそだろ。どうみてもみかどせんせこまってんだろ!」
「みかどくんはつんでれなんだもん!おれがおっきくなったら、しょーらいはしろむくのみかどくんとめーじじんぐーでうぇでぃんぐべるをならしてちかいのちゅーするんだもん!」
「ちょっと待って!しないからそんなの!」
明治神宮で!
ウェディングベルを鳴らして!
誓いのキスとか!
和洋折衷すぎるだろどう考えても!
突っ込みどころがありすぎて最早いちいち突っ込むのも大変だ。っていうかその前に恋人じゃないから!静雄君正しい!と叫びたい帝人先生に、臨也は神妙な顔で「わかってるよ」と。
「きみははずかしがりやだからね、そういうおくゆかしいところもすきだよ、みかどくん」
「分かってないです臨也君!」
「けっこんゆびわはぷちらなにしようね!」
「それをいうならプラチナ!っていうかその前に、」



「「ゆるしません!」」



小さな手できゅっと帝人先生の手を握り締めていた臨也を、せいやっと帝人先生から引き剥がし、さらには帝人先生を隠すようにその前に立った人影、二つ。
「そ、園原さん?正臣?」
え、あれ?庇ってくれるのは嬉しいけど、何今の「許しません」って。許す許さないの問題じゃないよ今!?
軽くパニくる帝人先生の耳に飛び込んできた言葉は、さらに意味不明だ。
「帝人は北海道の大自然に囲まれた荘厳な教会で豪奢なウェディングドレスを着て嫁に行くんだ!」
「違います!竜ヶ峰君は厳島神社で雅で壮大な神前式をあげて嫁に行くんです!」
えええー?
いや、そういう問題じゃ、決して断じてないよ!?
あまりのことに何も言えずにいる帝人先生を尻目に、ふん!と臨也が胸をそらしてさらに反論する。
「ばかなだきだくんは!みかどくんにはしろむくだよ!」
いや、威張るな。着れないから。と帝人先生が反論する前に、杏里先生が正臣先生のほうを向いて毅然と言う。
「そうです、竜ヶ峰君には白無垢です!」
はっきりきっぱり言い切る姿に、一瞬遅れて。
「まって!おかしいでしょその理論!」
必死の帝人先生の反論は無視された。
二人にそう言われて「ええ!?」とショックを受けた正臣先生だが、思わぬところから援護射撃が。
「お、おれはうえでぃんぐどれすもにあうとおもうけど」
「静雄君偉い!そうだぞ帝人にはドレスも似合うんだ!」
「ちょ、ちょっと待って!?静雄君は僕の味方じゃなかったの!?」
根本的な問題で僕はお嫁にいけないよ!?と空しく叫ぶ帝人先生の言葉は聞いてない!と、四人はそれぞれ好き勝手言い出した。
「だがしかし!臨也君には俺の大事な帝人はやれないぞ!」
「そうです!竜ヶ峰君を嫁に欲しかったらまず私達を納得させてからじゃないといけません!」
「ここにたちはばかるきょだいなかべ……みかどくんおれまけないから!まってて、ゆめのはねむーんはとうぜんよーろっぱのこじょうめぐりできまりだね!」
「みかどせんせい、あおいどれすもきたほうがいいとおもう、にあうぞ」
ああもう訳がわからない!
この人たちは僕に一体何を求めているんだ!
フリーズしかけた帝人先生の背後から、いかにもあきれたようにその光景を見ていた新羅少年が、そのときぼそりと呟いた。



「どれすとかしろむくとか……おいろなおしでどっちもきればいいじゃない」



「「「「それだ」」」」
「違う!根本的に違うから!」


*注
正臣と杏里→みたいだけ。いわば親の心境
静雄君と新羅君→何も考えてない。フィーリングの赴くまま
臨也君→本気と書いてマジ
作品名:だいすきだいすき!に! 作家名:夏野