小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

月夜

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 

ずっと秋が嫌いだった。

寒くなるから。寂しくなるから。

お前は秋が好きだって言う。

涼しくなるから。静かになるから。
月が出て、夜が長くて、誕生日があるから。

だけどやっぱり、俺は秋が嫌いなんだ。

綺麗になるから。

見たことない顔をするから。

きっと俺以外の事を考えてるから。

秋は、ね、

お前が少し、遠くなる季節だから。


ー月夜ー


秋が旬のものとか訊かれても、まぁ、秋刀魚くらいしかパッと浮かばないんだけど。

俺に言わせると、お前は、秋が旬。

別に魚とかキノコとかそんなんと一緒にしてるわけじゃなくて。食べ頃だとかそうゆうアヤシイ解釈も間違ってて。

そうじゃなくて、秋のお前は綺麗だから。

俯き加減に本を読んでいるときの横顔。サラサラと落ちてくる髪を耳にかける何でもない仕草。静かで、綺麗。

並んで歩きながら話していて、ふっと俺を見上げた瞬間の、その表情の飾らない美しさ。あどけなさ。

今年で3度目の、お前がいるこの季節に、俺はまだ慣れていなくて。
この季節のせいで変わるお前に、慣れていなくて。

だから寂しさなんて感じるんだろうなぁと、窓の側に立つお前の後ろ姿を見つめながら思った。

「ねぇ、こっち来てよ。すっげぇ綺麗。月。」

振り返って嬉しそうに笑うから、ソファーから立ち上がってみる。暗い部屋の中を真っ白い月明かりが淡く照らしていて、窓に近づくまでもなく、その冷たい美しさは見てとれた。

「うん。綺麗。」

呟くと、不満そうな声。

「そこから見えんの?」

「見えないけど。光で分かる。」

「うそ。」

不満そうな視線。

俺に向くのは一瞬。すぐに離れて、空へ。

きっと俺のほうが素直じゃないんだ。

「ほんとだって。」

急に近づいた声に少し驚いたようだった。後ろから絡みついた俺の腕に、白い指が戸惑うように這う。構わずに抱き寄せて、抱きしめた。

「・・・何。」

困ったような声。素直に預けられる体。
嬉しくて、肩口に顔を埋め、尋ねてみる。

「今、何考えてんの。」

小さく息を吸い込む音。

「・・・・・・月のこと。」

言うと思った。

「それヤダ。」

「ヤダとか・・・」

最後まで言わせずに、顎を捉えて唇を塞いだ。無理な体勢。強引なキス。お前はそういうのが好き。

「ん・・・っ、ふ・・・・・・ぁ」

鼻から抜ける声の甘さと、絡む舌の熱さ。驚くほどあっさりと首に回された腕が、もっと深くとねだっていた。

ごめんね。寂しかったね。許して。許して。だって俺も寂しかった。

ずっと見ててよ。俺だけ、見て。俺のことを考えてて。俺に触れたいと思って。求めて。欲しがって。もっと。もっと。だって、俺は、そうだから。

キスをやめると、お前はいつも顔を背ける。それはたぶん、熱に潤んだ瞳を隠すために。
だけど今夜は、朱に染まった目元を月が暴いてしまうから。

やっぱりお前は綺麗で、やっぱり俺は、少し寂しい。

作品名:月夜 作家名:なち