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D.o.A. ep.8~16

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ティルとライルの二人は、男を露骨に怪しんでいたので、もちろん相手もそれに気付いており、ひとまずは世話になるのだから、と名前を明かしてきた。
「トリキアス=ウンディーアと申します」

それだって、変わっちゃいるが、本名だかどうだかわかったものではない。
とはいえ、ライルとティルを相手に名を偽る必要もないので、問題はそこではなかった。

「何のために洞窟を目指す?」
「申し訳ないが守秘義務がありましてね。打ち明けるのは憚られる」
「俺たちも、洞窟へ行くのが任務でね」
「それは奇遇ですね」
「軍から命令を受けている。だから、こっちも得体の知れないあんたを案内することはできない」
「ほう、軍に?」
トリキアスは相槌を打つ。目を閉じた。なにやら考えているようであったが、すぐに血のように赤い眼を開き、
「なるほど、お二人は軍人さんですか。確か班の人員は5人組と聞き及んでいましたが」
「あと3人は理由があってここには居ないよ。軍人の証明見せたら納得いく?」

ライルが懐を探りはじめると、トリキアスは軽く押し止める。
「いや、結構。なぜか魔物が溢れかえる洞窟へ、わざわざ向かう一般人はいないでしょうからね」

なぜか、と言うことは、ヴァリメタルが本来どんな力を持っているか、そして今の異常を知っていると見ていいだろう。
ヴァリメタルの洞窟はロノア王国の国領にあるので、異状は、王国軍が解決する義務がある。
よって、こんなどこの馬の骨とも知れぬ男が入り込む余地はないはずだ。それなのに、仕事でやって来たと言う。
いったい誰なのだ、依頼人は?
ヴァリメタルの洞窟に魔物が溢れて真っ先に困るのは、周辺の町の住民たちだ。
彼らが軍へ訴え、それとはまた別のところへ解決を依頼したのだろうか。しかし、それでは二度手間ではないか。

「ところでお二人さん。なぜあのようなくぼみに隠れていらしたのか、失礼ながら、推測させていただきますと、
洞窟の前まで行ったはいいが、予想外の状況に撤退してきた、といったところでは?」

全くもって、そのとおりである。寸分の違いもない。
「…別に、数が多かっただけだし。本当なら大した相手じゃない」
そのまま認めるのが悔しいので、そう口を尖らせてみる。

「その溢れかえる魔物を、私なら何とかできる――と言ったら、どうです?」


作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har