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キャント・セイ・グッバイ・スターゲイザー

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 何ヶ月も外国に居たかと思うと、ひょっこり帰ってくる。そういうところに不真面目さとうさんくささを感じてはいたが、それでも俺にとって伯父さんはヒーローだった。だが俺は伯父さんを素直に慕うには大人になってしまった。そしてまだ、伯父さんと対等に見られるには子供すぎる。コンプレッックスというなかれ、ただどうしていいかわからないだけだ。追いつき追い越したいと思っても、たぶんそう言う尺度ではないんだろう。だからといって、このまま小さな弟のような扱いに甘んじるのが正しいかというとそうではない。

 空は満点の星だ。杉浦の家にくると、俺はいつも飽きもせず眺めてしまう。おれがぼーっと空を眺めていたら伯父さんもふいと視線をあげた。
「……星、きれいか?」
「うん」
「いろんなところの空を見てきたけど、やっぱりここが一番いい」
「世界にはもっときれいなところがあるんじゃないの?」
「そりゃ、砂漠や凍った湖の上なんかもういうことがないくらいすごい。けどな、世界中のどこよりもここが一番きれいなんだ」
「ふうん……?」
 なおも納得で着なさそうな俺に向かって目を細めて伯父さんはいった。
「大事なのは、俺にとって、ってことだ。俺やお前にとって、きれいだ、ってこと、な」
 ……こういうところがあるから、このおやじはだめなんだ。いつまでたっても俺のヒーローから卒業してくれないらしい。

 明日発つんだ、とふいに伯父さんは言った。おれは内心びっくりして、さらにそのびっくりしたこと自体にもびっくりした。伯父さんがふらっとやってきてまたふらっと出ていくのはいつものことだからだ。つまり俺は伯父さんに行ってほしくないわけだな、今後に及んで、と自嘲しながら、そっけなく、それはまた急だねと言った。この手の演技はおれにとって手慣れたものだった。しかし伯父さんは「お前のそのすかした面むかつくな」と言った。二度目は静かな声だった。俺はドキリとした。そんな声が出せるなんて、とか、俺はいつまでも元から知っていることを初めて知ったみたいに驚いてばかりいる。
「悪いとは言わねえ。……一種の才能でもあるしな」
 だが苦労する、と伯父さんはケラケラ笑った。
「お前、やりたいことはあるか」
「……一応」
「それを、忘れないで持っていて、もしも立ち止まることがあっても、取りだして眺めることができたら、大丈夫だ」
「……何があっても?」
 だれかが死んでしまっても? 大切な人が、自分の前から永遠に居なくなったとしても?

「何があっても」
 伯父さんはすこしわらった。
 
                       了