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D.o.A. ep.1~7

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Ep.6 いたみ



「なんと。この分ならあと3日もすれば退院できるよ」
医者は目を丸くして顔を上げる。

発熱がひいたのは4日目。
声を取り戻したのは5日目だった。
目覚めたあの日より、一週間と2日。
同僚となった兵士たちが、暇さえあれば見舞いに現れ、軍部の様子を逐一知らせてくれたが、日ごとの変化に、置いてけぼりになるような焦燥がつのる。
重傷と言われ、当初は少なくとも3週間の絶対安静を見積もられていると聞いたときは、冗談じゃないと唇を噛んだ。
その気持ちが回復力に影響したのかもしれない、と医者は実に不思議そうに付け加えて、カルテを閉じる。

「それで、まだ外出は禁止ですか」
「ああ、程度によるね」
「どの程度なら?ラゾーには」
「ダメダメ、あんなの1時間強の距離だよ、途中魔物に襲われたらどうする」
「もう俺は戦えます」
「そんなに急ぐ必要あるかね。あと3日おとなしく待てないの」
「………」
確かにそのとおり、一刻を争って帰らなくてはならない、切羽つまった理由はなかった。
けれど、どうしようもなかった後悔が、毎夜夢にあらわれて、辛いのだ。
「……わかりました」

「ところで、君の見舞いに来そうで来ない人を見かけたんだがね」
「はあ…?」
「いや、君の病室の前で立ち止まって、入ろうか迷ってるみたいだった。一回なにか用かって訊ねたら、何も言わずにどっか行ったけど」
「どんな人ですか」
「顔はよく覚えちゃいないがね。全体的に青かった。弓矢なんか背負ったりしていたよ」
「……」
眉間に皺を寄せるほど考え込むが、思い出せそうで思い出せない。
「まあ、実際に会ったらわかるかもしれんから、今度見たら引っ張ってでも連れてきてやろう」
「いや…別にそこまでしてもらわなくて、いいです…」


余談だが、医療費は国から支払われるという。
あの書類地獄の中に、労災保険に関する契約書があり、サイン済みであったが故だ。
村民を助けようとして死にかけたのが、業務上の事由と見なされたらしい。
もとはと言えば、王都であんなにのんびりしていたせいなので、嬉しくもなんともなかった。
もし初出勤があの日でなければ。もし虫の報せとかで察知できていたら。
もしソードの家でのんきに食事などしていかなければ、そんな、もし、ばかりが浮かんだ。


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作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har