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ちょっと怖い小咄【一幕】

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小咄其の九 『ネットカフェにて』


 とあるネットカフェの一室。

先月会社をリストラされた加藤半平太(仮名)は、今日も不満のありったけをネッ
トの巨大掲示板に書き込みまくっていた。
「うおおお、みんな格差社会が、政治が国が、オレ以外の全ての馬鹿共が悪いん
だーっ!」
エキサイトした彼は壁をガンガン蹴り、コップを投げつけ、雄叫びをあげる。

「そうだそうだ」
「もっと言ってやれ」
「ははは」
「アンタ神だよ」
「世の悪どもに、制裁を!」

ネットに書き込めば、すぐにレスがつく。ネカフェの外では何も言えず、言っても
無視されるだけの半平太だったが、ネットの世界では誰もが彼の信者であり、崇拝
者であり、太鼓持ちであった。たまに批判者も混ざってはいたが。

そして…
「これから…人を襲う!」
思い余ってそう掲示板に書き込んでしまった。途端に掲示板は大炎上となった。

「犯罪者、ハケーン」
「いいぞ〜!」
「予告キタ━━━━(゜∀゜)━━━━」
「やれやれ」
「通報シマスタ」
「氏ねよ」

騒ぎ、煽り立てる他の書き込み。その時、
「俺もやる。」
唐突にもう一人、犯行予告をする者があった。
「手始めに今いる店の客をやる。」
同志ができたことに勇気付けられ、半平太もそれに呼応した。机を打ち鳴らし、ま
た掲示板に書き込んだ。
「おお、やれやれ!」
すぐにレスがつく。

「すぐにやる。さっきから隣の客が壁を蹴ったり叫んだり、超ウゼェ。手始めにそ
いつを血祭りにする」

                                                                       ・・・おしまい。
作品名:ちょっと怖い小咄【一幕】 作家名:JIN