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サイコシリアル [2]

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『相手のペースに乗ってはダメよ。元々サイコパスにペースなんてないんだから』
そう、今回の作戦というのはいたって簡単。
自宅で待機する戯贈が遠隔で指示を飛ばすというもの。だから僕の右耳にはイヤホンが差し込まれている。そして胸ポケットには音声を拾う超好感度マイク。
これが戯贈の言っていた頭が戯贈で、体が僕という訳だ。僕はただ戯贈の言葉を代弁していればいい。体で後ろに隠れる支那を庇いながら。
今回の作戦で一番大変なのは斬島との会話に、タイムラグが生じるというもの。
勿論、タイムラグが有りすぎると、サイコパスの斬島でも疑いはするだろう。
だから僕は、戯贈の言葉をある程度予測し喋らなければならない。
ひとまず、まだ斬島は戯贈がいないことを気にしていないのが救いだ。
僕は、聞こえるか聞こえないか瀬戸際の声で、分かってるよ、と答えた。
しかしこれは半分嘘だ。僕は平静を装ってはいるが、尋常じゃない程恐怖している。両足はカタカタと震えて、全身は汗をかき始めているのが分かる。
単純にびびっているのだ。
「可哀想にお嬢ちゃん。怖がらなくていいんだヨ。すぐにそんな感情消してあげるからネ」
斬島はそう言いながら、ゆっくりとした足取りで近づいてきた。
『会話を続けるのよ、涙雫君』
戯贈は、短い指令を僕に飛ばした。
「斬島猟木、感情がないお前に人の感情が分かるのか?」
挑発。
これも作戦の一つ。
斬島は威勢がいい人間が大好物なのだ。
「今日は威勢がいいネ、坊や。前回とはまるで違うネ」
案の定、斬島は足を止めて僕との会話に応じた。
「何故、妹を狙うんだ?」
僕は会話を引き延ばそうと試みた。
「坊やには関係ないだろ。坊やと馴れ合ってる暇はないんだヨ」
しかし、斬島これ以上会話をする気がない。
『そうね、まずは手始めに挑発というよりも、罵りなさい。勿論、斬島の過去について』
戯贈がイヤホン越しに言った。
斬島の過去。
戯贈から聞いた、あの話だろう。
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし