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陰陽戦記TAKERU 後編

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 3体目の魔獣を倒した俺達は無事新年と大晦日を迎えられた。
 風祭神社では参拝客が大勢押しかけていた。
 1年の抱負は元旦に有りと言う事でみんなと一緒に神社にやって来た。
 正直初詣なんてどうでもよかったけど、たとえ世界が滅んでも見て置きたいものがどうしてもあった。
「ありがとうございました。良いお年を」
 お客に向かって頭を下げる美和さんを見た。
 やっぱり巫女服姿の美和さんは神々しい……
「何見てんのよ?」
 すると加奈葉が俺の顔を覗き込んできた。
「巫女さん見て鼻の下伸ばすなんて…… いやらしいわね」
 加奈葉は軽蔑したような目で見やがる、
 自分が巫女さんになったら学に見せびらかすだろうに、
 ちなみに香穂ちゃんも巫女服姿で神社の手伝いをしている、
 賽銭を投げ入れて手を叩く俺達はそれぞれの願いを祈った。
 そしておみくじを引いた。
「学、どうだった?」
 俺は隣りを見る、
「ん、末吉だけど……」
「あ、僕は中吉です」
「俺は吉だ」
 拓朗も桐生さんもそんなもんか…… まぁそれが一番いいんだろうな、
「やった! アタシ大吉!」
 加奈葉は嬉しそうに飛び跳ねる。
「そう言えば大吉引くと運がなくなるんじゃなかったか?」
 俺はさっきの仕返しがてら言う、
「うっ、うっさいわね、そう言うアンタはなんだったのよ?」
「ん、ああ……」
 そう言えばまだ見てなかったな。
 俺はまだ開いてないおみくじをみる、すると……
「……だ、大凶」
 皆顔を顰める中加奈葉だけが腹を抱えて笑いやがった。
 何で俺だけ?
「し、心配する事ないですよ! 大凶が出たら後は悪い事なんて起きないんですから!」
 拓朗が励ましてくれた。
 すると学も言ってくれた。
「そうだな、まぁ武ならどんな試練でも乗り越えられるだろ」
「ん、ああ、それもそうか……」
 おみくじはまぁ運試しみたいな物だ。
 正直気にする必要は無い、後ろでまだ爆笑している加奈葉がムカツクが笑いたい奴は笑ってろ、
 俺はどんな試練が来ても負けたりはしない、必ず仲間と供に饕餮も倒して世界に平和を取り戻すと誓った。
「そう言えば桐生さん、1つ聞いて良いですか?」
「何だい?」
「桐生さんはどうして変身できたんですか?」
 俺が尋ねると桐生さんは一間置くと……、
「まぁ、確証はなかったけど…… 自分の正義って奴かな?」
「自分の正義?」
「香穂ちゃんは分からないけど…… 少なくとも君は学君を助けたかったから、そして拓郎君は命に対する慈愛だろ?」
 言われてみれば確かにそうだ。
 俺は友人である学の為に、拓郎はライブの命の為に、誰かの為になる事が鎧化の鍵なのか?
「俺はこれでも警官志望でね、曲がった事は許せなかっただけだ。特に彼らみたいな人の小さな幸せを守りたい、そう思った」
 桐生さんは参拝客達を見た。
 みんな本当に明るい顔をしている、
 知らないだろうが暗黒天帝や魔獣達が作りだした鬼による騒ぎがあったにも関わらず、こうして新しい年に希望を抱いている。
 鬼騒ぎが無くてもこれから何が起こるか分からない不安もあるだろう、
 だけどそれに匹敵…… いや、それ以上の希望もある、それを守るのも悪くないと思った。
「でも確証が無かったのに思い切った事しますね」
 拓郎が言って来た。
 確かに…… 俺の法力も残ってたから脱出は可能だったが、もし考えが外れれば鎧化は出来なかった。
「……まぁ、下手な確証より感の方が信用できるモンだよ」
「そんなもんですか?」
 頼りになるのかならないのか分からなくなってきた。
「良いじゃないか、試練は乗り越えたんだから…… それに魔獣も残るは一匹だ。ポジティブに行こう」
「仕方ないっスね」
 俺は苦笑した。
 そして今の平和を満喫した。
 しかし俺はこの後後悔する事になる、身近な人間の僅かな心の闇に気付いてやれなかった事に……