小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU 後編

INDEX|28ページ/115ページ|

次のページ前のページ
 

 それから時が流れ、
 檮杌との戦いから俺は自分の気持ちを抑えきれずにいた。
 何しろ俺は運が悪ければ美和さんを失っていたからだ。
 こんな調子じゃ勉強もはかどらないし、それに今日は休って事もあり散歩に出かける事にした。
 適当にブラブラ歩いていると俺は風祭神社にやって来た。そう言えば香穂ちゃん元気かな?
 香穂ちゃんも確か自分の力不足を嘆いていたはずだ。
「えいっ! たあっ!」
 すると庭の隅では稽古着に着替えた香穂ちゃんが稽古用の薙刀を持って特訓していた。
「香穂ちゃん」
 俺の声に気付いて香穂ちゃんはこっちを見た。
「あ、お兄ちゃん。
「やぁ……」
 顔が明るくなる香穂ちゃんに俺は手を振る、

 この前と違い香穂ちゃんは結構立ち直っていた。
 やっぱり女の子は笑顔が似合うぜ。
「元気そうで何よりだよ、随分調子を取り戻してきたじゃ無いか」
 すると香穂ちゃんは目を泳がせた。
「……そうでもないよ、ただ私にはこれしかないから」
「あっ」
 やべっ、また余計な事を言っちまったか、するとそこへ白虎がやって来た。
『おいおい少年君、何デリカシーの無い事をいってるんだい?』
 タイミング悪い時に帰ってきやがった。
 普段は頼みもしないのに出て来るくせに……
「白虎止めて、お兄ちゃんはそんなつもりで言ったんじゃ無いから!」
『分かってるよ、ちょっとからかっただけだ』
 この野郎……
『でも聞いたよ少年君、美和が危険な目にあったんだって?』
「う……」
 それを言われると何も言えなくなる、すると白虎はため息を吐く、
『少年君、戦いに次は無い、それは知ってるだろ?』
「……ああ、もちろんだよ」
 それは分かってた。
 負ければそれまでだ。
「で、でもお姉ちゃん助かったんでしょう? お兄ちゃんが助けたってのは事実じゃ無い」
 香穂ちゃんは言ってくれる、まるでこの前とは逆だな、
 自分に力が無くても必死で補おうとしてる香穂ちゃんは正直偉いと思った。
 香穂ちゃん(白虎もついで)と別れると別に用がある訳じゃ無いが商店街の方にやって来た。しかし俺の気持ちは晴れなかった。
「何やってんだよ俺は……」
 考えれば考えるほど自分の不甲斐なさが膨れ上がる、
 俺にもっと力があればと思った。
『武っ!』
 するとポケットの中の麒麟が言って来た。
「どうした、四凶か?」
『ああ、この先だ!』
「この先って……」
 俺は走り出すとそこは川原だった。
 桐生さんを始めて見かけたあの川原だ。
「なっ……」
 確かにそこには四凶がいた。
 確か饕餮とか言う奴が土手の真中に浮かんでいた。
『ヌンッ!』
 饕餮が目を見開くと地面が盛り上がり、土の下から何かが出てきた。
 それは以前本で見た事があった。
 シューティング系のゲームの攻略本だがそこに描かれていた武器と同じだった。
 投下式の大型爆弾、おいおいこれって……
「不発弾か?」
『ムッ?』
 すると四凶が俺の姿に気付いた。
『ほう、貴様はあの時の……』
 饕餮はオレを見るなり薄気味悪い笑みを浮かべた。
「テメェ、それをどうするつもりだ?」
 俺は尋ねるが饕餮は俺を見つめるとこう言った。
『フッ、随分腑抜けた奴だな』
「んだと?」
『腑抜けだと言ったのだ。聞えなかったのか?』
「テメェッ!」
 俺は麒麟の宝玉を取り出すと鬼斬り丸を呼び出した。
 麒麟も具現化すると俺は鬼斬り丸の鞘を引き抜いて両手で柄を握り締める、しかしどう言う事だろう、切っ先がカタカタと震えた。
「なっ?」
 見るとオレの手が震えてた。
『どうした武? 武ッ!』
 俺の震えは止まらなかった。
 さらに腕だけじゃなくて足も、どんどん酷くなってくる!
『フン、腑抜けどころかとんだ腰抜けだな。恐怖にかられて震えが止まらぬとは……』
 おかしいぜ、こいつを見てたら何も言えなくなる、
 体も震えるどころか金縛りにあったみたいに動かない。
『まさかお前の力は……』
『……やはり聖獣には通じぬか、その通りだ。その男の恐怖心を増幅してやったに過ぎぬ』
「恐怖心?」
『貴様はつい最近恐怖に駆られた事があろう、私には分かるぞ。』
「くっ……」
 バレてやがる、
 何が理由なのかは分からないみたいだけどな……
『人間などこんな物だ。どんな兵でも必ず恐怖と言う物がある、それがある限りは人は我々には勝てぬ』
『ふざけるな!』 
 麒麟の体が輝くと人間大くらい巨大化して饕餮に突進した。
 しかし饕餮の回りに黒い壁のような物が現れると麒麟の攻撃を防いだ。
『ガハッ!』
 麒麟は俺のところまで吹っ飛ばされると子猫ぐらいの大きさに戻った。 
「麒麟ッ!」
 俺は麒麟に手を伸ばそうとする。
『聖獣もある主がこれなら力も弱くなるか。腰抜けには腰抜けの聖獣が良く似合うな』
『くっ……』
「いい加減にしろ! テメェ絶対許さねぇ!」
 しかし俺は飛び込む事が出来なかった。
『……まぁいい、腰抜けには何もできまい、これは武器であろう?』
 そりゃそうだ。爆弾なんだし……
『これは海を渡った国にある者達がこの国を破壊する為に作られた物、それを返してやろうと言うのだ』
「返す?」
『決まっておろう、これを落とした国にだ』
「まさか……」
 一々海を渡って落としに行くってのか?
『まぁ見ていろ、近い内にこの世は戦乱の世の中になる。そうなれば我々が直接手を降さずとも人間供が勝手に憎み合い殺し合う、陰の気は集まり放題だ』
 饕餮は口元を歪めて笑った。
『止めたければ止めれば良い、まぁ貴様にできればの話だがな、フハハハッ!』
 すると饕餮の口が大きく開く、
 いや大きくどころじゃない、顎が外れてさらに引き伸ばしたようなると不発弾を飲み込んでしまった。
 そして黒い球体に変化すると空に飛び去ってしまった。
「武様っ!」
 するとそこへ美和さんがやってきた。
 買い物帰りなのか左手に買い物袋、右手には弓、隣りには朱雀が具現化していた。