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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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 夏休みだというのに、二日連続で石間と顔を合わせた。
 学校でだって、なかなかないってのに。

「よう」
「おう」

 今日も母親はパート、お兄さんは会社員。
 ファンタとペプシとコーラと、リボンシトロンしかないと言う。

「あちいな」
「やっぱチャリはやめときゃよかった」

「何分かかった」
「45分」

「やるね」
「うん、死んでる」

 かわいそうに、と石間がうちわで扇いでくれる。
 学祭で配付されたうちわで、石間の仲間の一人がデザインしたんだと。

「ごめん」
「いいって、遠いとこありがとな」

「ちがう。石間、なんか予定あったよな、いきなり来てごめん」
「は? いきなりじゃないし、木野が来てくれるって言うなら」

 やっぱりなんか予定潰したのか。

「友達付き合い邪魔したな」
「俺たちの付き合いのが大事だろ」


 うれしいけど、大事かどうかは分からない。
 付き合っているとはいえ下の名前だって最近知ったばかりの俺と、長年つるんでる友達と。

 そうか、恋愛って、集中的に注ぎ込むものか。

「そっか」
「そうだよ」

「なにがだよ」
「木野と仲良くなりてえんだ」

 今時『付き合う』っていうと、仲良くなることなのか。
 食の欧米化が問題視されてるけど、今時挨拶でキスとかしちゃうのかも。そりゃ問題だ。恋愛って死語だったりして。

「なるほど」

 からかわれていたほうが、ましだ。昨日のお礼にと思って持ってきたものがあるけど、やめよう。持って帰ろう。

「これなによ」
「別に」

 暑苦しい。
 男二人が6畳間で机とベッドに挟まれてさ。
 俺の持ち物が気になるらしい石間がちょっかいをかけようとしてくるのがまた暑苦しい。
 何をしても格好いい。
 窓の外では竿竹屋の間延びした声がした。まだ午前中だよ、朝から、俺は一日中石間を拘束するつもりだったってか。

「木野、俺といてつまらないか?」
「結構つまってるよ」
「そっか」
「石間は? つまんなくね?」

 石間は肩を竦めて、俺の背後に隠された紙袋を今一度見つめ直した。

「それ、気になってる」
「俺のこと気にしろよ」
「気になってる」
「あっそう」

 石間は俺の膝を撫でて、爽やかに笑った。
 手を伸ばして膝に触れるだけの動きで、石間の香水の香りが振りまかれた。
 香水じゃない石間の香りのする部屋に。

「木野がすごい近い」
「石間は俺のこと気になるのか」
「大変気になりますよ」
「そっか。なら、良かった」

 それで満足したことにして、俺は石間家を後にした。
 竿竹屋はまだご町内にいる。

作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう