小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ssコミュ

INDEX|9ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

お題・石鹸


三角帽子の少年が口から石鹸を出した。
ころんとしたくりーむ色の丸い石鹸。
コロッケの匂いを消すためだ。
なぜなら少女はコロッケ作りの天才だったからだ。

少女からはいつもコロッケの匂いが漂っていた。

だから少年は口からぽんぽんと石鹸をはきだす。
いくつもいくつも。

「コロッケなんか」

と少年は言う。

「コロッケなんか」

少年は石鹸の海に溺れていく。
その間にも少年の口からは次々と石鹸が溢れだしてくる。
静かに泡立ちながら。

「コロッケなんか」

…嫌いだ、と言った少年の口が消えた。
目が消えた。
鼻が消えた。
足が、手が、内臓が、骨が、肉が消えた。

コロッケの匂いが、少女の匂いが消えた。


…石鹸の海に残ったのはもう少年の台詞だけだった。

「でも大好きだったんだ。」


作品名:ssコミュ 作家名:川口暁