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コミュニティ・短編家

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お題・ショートヘア


花子がショートヘアになった。
嘘だろうと僕は呟いた。
いや、そんな風に呟いたのは僕だけではないはずだ。
何故ならサラフワロングヘアが彼女の代名詞だったからである。
ちなみにそんじゃそこらのサラフワロングヘアではない。

彼女はその名の通り花のように可憐な女の子だった。
だがしかし顔はクラスに一人か二人は必ずいる程度のカワイコちゃんであった。
しかし彼女は他の美少女たちとは一線を画す絶対的な人気を誇っていたのである。

それは何故か?
答えは簡単髪の毛だ。
彼女の髪はふうわりと柔らかく程よくしっとりと、それでいてサラサラとしていて、他の女子の人工的なシャンプーの香りとは違う、なめらかな、甘い香りをいつも漂わせていた。
他の女子の髪が105円の焼きプリンだとしたら彼女の髪は500円のなめらかプリンである。それほどの差があった。
花子が通る度に男たちは皆振り返って撫でくり回したい欲求を必死で抑えこもうとし、女たちはというと同性これ幸いケケケケと思う存分彼女の髪を触りまくっていたのである。

そんな花子の髪が。
髪が。
髪が。
クラス中どころか学校中にセンセーションが巻き起こったのは言うまでもない。

僕はというとパニックになっていた。
何故かといえば彼女と同じクラスになって1ヶ月たった人間のほとんどが皆…特に感受性豊かな者ほど…花子の毛依存症になっていたからである。
ちなみに僕は一年生の時も花子と同じクラスだったので現在15カ月めとなっている。完璧なる依存症である。
彼女の頭を一目見て現状を理解した僕はうわあああと頭をかきむしった。僕の他にも何人か同じ動きをしているやつがいた。
一方の花子はけろりとした顔で一時間めの準備なぞをしはじめた。
僕らは教室の床でのたうち回った。

ぜえいぜえいと息を整えながら僕はハッと気付く。
気付いて叫ぶ。

「紀村さん!!」

紀村花子という名なのである。

「なぁにぃ?」

「かみ!」 

「うん切ったのぅ。にあう?」

「どこで!どこで!」

「えぇー?どこって美容院だよう。」

「どこの?!どこの?!」

「うーんと駅前のひっちゃかめっちゃかまぼこぼっこって店。」

「よしきた早退します!」

僕は先生に宣言し教室を飛び出た。
僕の意図を察した10人あまりも慌てて後をついてくる。
追い付かれてたまるか髪は僕のもんだ。
つまり僕は美容院のゴミ箱をあさって花子の髪をかき集めようと思ったのである。
そもそも彼女の髪すら手に入れば後は興味ない。
我ながら気持ち悪いがこれが依存症なのだから仕方がない。
気持ちよい依存症など存在しないのである。

僕はもう獲物を追う般若のような敵に終われる落武者のようなよくわからん姿で走りまくった。
そして客をばかにしてるとしか思えない店名の美容院にたどり着いた。

「頼もう!!」

「いらっしゃーい!」

現れた美容師は花子の髪で作ったマフラーを巻いてニカニカ笑っていた。
僕らは崩れるようにして倒れていった。
作品名:コミュニティ・短編家 作家名:川口暁