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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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断りきれなかった、というか後輩から強引に押し付けられたチョコレートを持って、電車に乗ると否応にも若干注目を浴びる。
おおきなスポーツバッグは柔道着と勉強道具でいっぱいで、手に持っているいくつかの小さい紙袋はその中にはとても納まらない。

真面目そうな高校生が、この日にチョコレートの包みを持っていることは、世間一般の人たちにとってはとても微笑ましいことなのだろう。

まさか、渡したのが男子校の1年生だとは知らないだろうから。

別に悪いことをしてるわけではないのに、申し訳ない気分になって、早く自宅の最寄駅について欲しい、と思う。

そういうときに限って、時間がたつのが遅いのだが・・・。

さんざん時間をもてあまして、目的駅に到着。駅を出るとまだ冷たい風が吹き付けてきた。
春までは、まだまだ遠そうだ。

ホームの階段を上っていくと、向こう側の階段から、よく知った顔が見えた。
「司。同じ電車だったんだな」
「みたいだね」
そのまま並んで、改札をくぐる。
そうすると、また、見知った顔がいた。

「あれ・・・」
司とは違い、すぐにそうとは判断ができない。
けれど、判断する必要もなく向こうから声をかけてきた。

「岡本くん、久しぶり」
ストレートのロングヘアに、お嬢様学校の制服。
そして、高めの柔らかい声。
垢抜けてはいるけれど、清楚で優しげな雰囲気は中学の頃と変わっていなかった。
「・・・池野、だよな?」
「うん、二人は相変わらず仲良しなんだね」
司と一緒のすがたを見て、くすくすと笑っている。
対照的に、司の表情は硬い。
ほんとうに短期間ではあるが、池野雅実は孝志の元恋人・・・だった。
すごく短期間にその交際が終った原因は自分にあるといっても過言ではない。
だから、できるだけ会いたくない相手だった。
「久しぶりだな」
「そうだね。中学卒業してから、会ってなかったよね」
「何年かたっても、意外と変わってないな」
司を差し置いて、二人は和やかに会話を進めている。
「こんなところで、誰かと待ち合わせしてるのか?」
「待ち合わせはしてないんだけど、人を待ってたの」

その次に続く言葉が、司には予想できた。
だから、もしできたなら、池野をなんとか黙らせて、孝志をさっさと引き離して連れて帰っただろうと思う。

でも、そんなことは無理。

「岡本くんを待ってたんだ。ここにいれば会えるかなって思って。こんなことしてごめん。でも、ちょっとだけ話できないかな?」

なんて言われたら、孝志は断らないに決まってる。

「司、先帰っててくれ」

なんていわれるのも、予想の範囲内。
今日は嫌な予想ばっかり当たる日だ、とイライラしながら一人で帰ることとなった。