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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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ACT,3





 そして現実は。


「高崎! 高崎っ!」
「聞こえるか!? しっかりしろよ! 高崎!」
 朦朧とする意識に鈍痛を感じながら、悠弥は呻いた。体が動かない。
「たかさきっ!」
 ああ……そんなに呼ばなくても聞こえる。……でも……目の前が暗いや。あっちこっちで呼んでる。悲鳴も聞こえる。……。救急車……のサイレン……。
「いま、救急車が来たからなっ。頑張れ、大丈夫だぞ!」
「悠弥くんっ、悠弥くんっ」
 クラスの女子か。覚えのある声だ。それにしても……何かあったのか? ああ、わかんねー。
 まわりで聞こえる様々な声が、再び歪みだしたかとおもうと、あっというまに意味が取れなくなって意識が底のほうへ沈み始めた。
 ――ハハ。……みっともねー。
 苦笑しようとしたら、やけに胸が痛かった。
 どうやら怪我をしたのは自分らしい――そう思ったのが、最後だった。脳裏に――微かに『死』という言葉が過ぎって、消えた。


 再び意識が浮上したのは――白い部屋の中だった。
 いやになるほど全身が痛い。体がいまにもばらばらになりそうだ……悠弥は、虚ろな意識の中でそう思った。歯を食いしばる力すら、ない。
 見えるのは、チューブが幾本か。点滴の瓶。酸素マスクと、仕組みのよくわからない機械。かすかに耳に届く音は、どうやら自分の心音を刻んでいるらしい。他には、何もない。
 この世界で人を生かすモノ。
 たまらない――。
「……先生」
 枕元から、声。重い首を無理やり巡らすと、白衣の女性だった。看護婦さんか、と思うや否や、白髪に眼鏡の男が顔を出した。……担当医、だろうか。
「君、……わたしがわかるかね」
 悠弥はぎこちなく頷いた。その動作さえ億劫だし、辛い。
「名前は『高崎悠弥』くんだね」
 再び、頷く。
「いいかい。君は快方へ向かっている。助かったんだよ。……わかるかい」
 こくん、こくん。医師は、すると微笑んだようだった。
「奇跡的なことだよ。頑張りなさい。……生きたいと、おもいなさい」
 患者の負担を考えてか、医師はそれで会話を切り上げた。看護婦と何か言葉を交わし始めたが、それは聞き取れなかった。ここは集中治療室か――とおもったとき、こんどは聞き覚えのある声を捕らえた。
「悠弥ちゃん……!」