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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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 病室のドアのあたりのような気もしたが、悠弥の意識は、強烈な睡魔をともなってふたたび遠のきかけていた。苦笑、する。また、迷惑かけたな……悠弥はそうおもった。
 悠弥ちゃん、なんて。中学三年生の男つかまえて。
「……悠弥ちゃん、かわいそうにね。頑張るのよ……」
 頷いたつもりだったけれど、それがどうにか形になって伝わってくれたかどうか。
 多栄子という優しい人だ。近所に住んでいるというだけで、問題をめいいっぱい抱えた子供を、我が子のように大事にしてくれる。すまない、と――心の底から。
 ――死にたかった。
『転生』――魂の器であり、老いては朽ちる肉体を、幾度も交換して生き続ける……生き続けてきた、『御師』。その生を、終わらせてしまいたかった。
 どだい、二千年などという途方もない時間を生きてきたこと自体が……正気の沙汰では有り得なかったのだ。
 だから、あんなことになってしまった。
 早く、『天津久米命』などという……天帝から授かった名を捨てるべきだったのだ。任務に失し、罪を犯したその時、この世から消えてしまうことを心から望んだ。確かに自分は、『死』を願った。
 二度と、ふたたび……この世の光を見るまいと。
 敵味方が入り乱れた百年前の、大戦。
 覗きたくない、記憶の狭間。
 指揮官を失ったとき、すべてがばらばらになった。同じ『御師』たる伊勢神族は、戦に散った。壮絶な戦いは凄まじい痛手だけを残し――百年という歳月が過ぎ、肉体を換え、やっとまともに行動できるようになったいま。誰ひとりの消息も知れない状況が続いている。そのつけなのか  『高崎悠弥』には、温かな家族も家庭もなかった。
 報いだ、とおもう。
 命に背き、天を欺き、勝手な暴走で味方を総崩れに陥らせた報いだ。
 伊勢神族の名に、恥じる行為で。
 死にたかった……。これが報いというならば、滅することなき魂と、苦しみと痛みを抱え、いつまで生きてゆけばいいのか。

睡眠と覚醒を繰り返し、一般病棟に移ることができたのは、それから三日後のことだった。
 驚異的な回復力だといって、医師たちは感心している。担当医は生きようとする力で、人体の神秘だというが、悠弥はそうは思わなかった。実際、この回復力というか治癒力には、理由があったのだ。『高崎悠弥』という器にはいっている『久米命』という『神霊魂』のせいだ。