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　ちがいない――空虚な、憶い。
　日に日に暑くなってゆく、夏空。開け放った窓から流れ込んでくる陽炎のような風。雲は、白く膨らみ、風を孕んで流れて行く。
　季節柄、時期ネタではあるんだろうなぁ。……まだ梅雨まえだけど。
　どうするべきか。何も感じない。それが、不信なのである。幽霊――悠弥はそういう言葉は使わないが、とにかく『何か』が在るのならそれこそ何らかの沙汰があってもよさそうなものだ。路頭に迷える彼ら――つまり、死を迎えて彷徨う魂たちを在るべきところへ導くことも、また『御師』の仕事だった。人はそれを『黄泉の国』という。死を迎えることを許された魂が、逝く場所。
　――何か……あるのか？
　その話は、悠弥の警戒心を喚起した。のんびり休養取って眠っていられる立場じゃあ、なかったことを軽い頭痛とともに思い出す。爆発事件を残して『みずち』を始末したはいいが……怪我が癒えれば退院し、再び孤独な戦場へ戻らなくてはならない。
　永遠に続く、過酷な、地獄……。
　だがしかし、こうなると――退院前の一仕事、ということになりそうか……？
　ひとたび首を突っ込むと、どうにも放っておけない。それは己の気性なのだが、切り捨てる冷徹さを、悠弥は――久米命はもちあわせはいなかった。
　すました涼しげな同室者の怜悧な表情を横目に、悠弥はチョコレートケーキをつつきながらそうも思っていた。