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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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夜桜お蝶~艶劇乱舞~

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五之章


 先日のお蝶の唄と黒子の人形劇がいたく気に入ったらしく、代官の御付きに推挙してもらい、今日は日の高いうちに料亭に呼ばれていた。
 秋めいていた今日この頃から急に、夏の暑さがぶり返えしたことから、道を行き交う町人たちの中には、額に薄っすらと汗をかいている者もいた。
 そんな日差しの中でも、黒子はいつものように真っ黒な装束を着て、重たいであろう荷物を背負って歩いている。
 お蝶たちが呼ばれたのは、静かな町外れにある情緒が溢れる料亭だった。その場所でお蝶たちの芸を見たいというのだ。
 開かれた玄関を潜り抜け、出迎えた店の主人に連れられ、中庭に面した座敷に連れて行かれた。
「この中でしばらくお持ちください」
 と、早々に主人は姿を消した。
 落ち着いた様子でお蝶と黒子は畳に腰を落ち着かせた。
 しかし、黒子は葛籠を背負ったままだ。
 お蝶がひと言。
「あたいら、この町で人に怨まれるようなことをしたかねぇ?」
 そこら中から気配がした。それを承知で畳の腰を落ち着かせる、まさに落ち着きよう。部屋の周りは殺気を殺した野郎どもに囲まれていた。
 堰を切ったように襖が蹴破られ、押し寄せる男たちが荒波をつくった。
 すぐさまお蝶と黒子は障子を開けて逃げた。
 障子ごと敵を押し飛ばし、軽やかな足並みで縁側から庭に降りた。
 お蝶の桜柄の着物が舞い揺れ、描かれた花弁がゆらりと映る。
 庭に出たお蝶たちは、囲い込み漁に掛ったように、逃げ場もないくらい取り囲まれてしまった。
 若い衆を掻き分けて、天狐組の親分が姿を見せた。手に握られているのは珍しい短銃だ。密貿易かなにかで大枚をはたいて手に入れた品だろう。
「お紺の奴がお前さんたちのことを臭うというもんだからな。うちの若い衆が行方知れずになってるんだが、知らねえかい?」
 人に物を尋ねるにしては物騒な装いだ。周りを取り囲んでいる人数を見ると、余程お紺に気を付けろと言付けられたのだろう。
 それだけ二人は警戒されているということだ。
 この緊迫するはずの状況で、お蝶は微笑を絶やさなかった。
「親分さんのところの若い衆になにがありやしたか? あたいらはしがない旅芸人ですよ、こんな大勢に囲まれる道理はごぜえやせんぜ?」
 このお蝶の物腰を見て、親分はお蝶の実力のほどを計った。お紺の勘が騒いだように、やはりお蝶たちは只者ではないと親分は悟った。