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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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6


 すっかり日が暮れてしまっていた。夕焼けが、少しずつ夜の闇に侵食されていく。オレンジ色で一色になった夏の道を、俺と紅也は二人で歩いていた。
「ハイラちゃん、なかなか可愛かったねえ」
――は?
いきなり妙なことを口走った黒髪の悪魔に、俺は思わず聞き返す。
「だーかーらー……。君、本当に言っている意味、分からないの?」
 じろりと睨み付けられたので、俺は言葉を慎重に選ぶ。
――あー、まあ。
 なんとも中途半端な答え方をしてしまった。これでは言葉を選ぶも何もあったものではない。
「…………。まあ良いさ。それよりも、ハイラちゃんの話、どう思う?」
 咲屋の話。それは――どれについてのことだろう?
「全部」
 こともなげに言う紅也。
――全部……って、あれやこれや何やかやも含めてか?
「勿論」
――……どう思うも何も……変な話だな、とは……思ったさ。
「変な話……、うん、そうだね。確かに、変な話だった」
――何が言いたいんだ?
「いや、ただ単に、君がどう思ったか聞きたかっただけだよ。別に、他意はないさ」
 何だか、そこまで『なんでもない』と言われると、逆に不安になってくる。
――本当にそれだけか? 紅也。
「…………」
 紅也は少し考えるような素振りを見せてから、立ち止まり、振り返った。お、なかなか真剣な顔だ。
「君は、彼女の話はどこまで本当だと思う?」
――どこまで?
「うん。彼女が話した、君を刺した理由について……あの話、信じている?」
――ん……。信じるも何も、疑う理由がないだろ。
「疑う理由が無い、故に信じる。ふむ。君って時々、物凄く素直な高校生に変身するよね」
――…………?
「僕の考えを話そう。彼女の話……、あれは多分、真実だ」
――…………。
「記憶を失っている間に、君にナイフを突き立てていた――気付いたのは、刺した直後。混乱した頭で、謝りの言葉しか口に出せず、そのまま逃げ出してしまった、と」
――…………。
「でも、」
――でも?
「本当に、あれは真実なのだろうか」
――はあ? 今、おまえがそう言ったんじゃないか。
「ああ。彼女の話は、確かに真実だ」
 彼女にとってはね、と紅也は付け足した。回りくどい奴だ。結局、どういうことだって言うんだ?
「だから――」
 と。
 そう、紅也は言おうとして……、途中で言葉を止めた。
――どうした、紅也。
「…………」
 黙って、そのまま前方を見据える紅也。そこに、誰かがいるのだろうかと思い、俺はそちらに視線を向けた。夕日の光が、そのまま俺の眼に入ってくる。眩しさをこらえて眼を凝らすと、そこには確かに、人影があった。……どことなく見覚えのあるような……人影が。
「君たちは更衣雨夜と……、葉暮紅也君、だね」
 疑問型、と言うよりは、分かりきっていることを改めて確認するように、その人物は言った。夕焼けの逆光で顔ははっきりしないが……、どうやら若い女性、恐らくは俺たち(紅也が何歳かは分からないけれど、それはこの際置いておく)と同年代の女子のようだ。どうもどこかで聞いたことがあるような、ないような……そんな声。