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冒険倶楽部活動ファイル

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ファイル9 聖夜の奇跡


 外はすっかり寒くなってコートも無ければ外も歩けなくなった冬の日…… 
「38℃……」
 私は布団の中で私は温度計を見ていた。
 実は私は2日前から、風邪を引いて学校を休んでいた。
 しかもちっとも熱が下がらなかった。
「ゲホ、ゲホっ!」
 喉が痛い、寒気もする……
「みんな何してるかな……」
 時計を見るともうすぐお昼になろうとしていた。
 私はしばらく皆の顔を見ていなかった。
 12月に入ってすぐ、倶楽部の部室の隣りにあるもう1つの土蔵があるのだけれども、そこは普段物置として使っているらしく、秀君は中からクリスマス・ツリーを引っ張り出してきた。
 そのツリーはおじいさんから貰った舶来物と言うので結構良い物だと言うのだけれども飾りが殆ど無く、毎年自分達の好きな物を飾ってオリジナルのクリスマス・ツリーを完成させと言うのが今回の冒険だった。

 そして日曜日、つまり今週の初めにみんなで買い物に出かけた。
 本当にみんな買いたい物を買っていた。
 秀君はナスカの地上絵の…… なんだったかな? 猿と鯨のキーホルダー、私はハチドリしか知らなかったけど……
 舞加奈ちゃんは…… よく分からないけどロボットアニメのプラモデル、
 龍太郎君はこの季節は忠臣蔵だと言って大石内蔵助と浅野内匠頭を作ると言って紙粘土を買ってた。
 功治君はあろう事か死神やゾンビのフィギュアを買おうとしていた。でも羽須美ちゃんが本気で嫌がってたから仕方なくUFОのオモチャにした。
 羽須美ちゃんは龍太郎君みたいに自分で作ると言って、ヌイグルミを作るのだろう、綿と生地を買った。
 私はクリスマスカードにした。いくら好きな物で良いと言われてもまさかラノベを飾る訳にもいかず、あまり得意では無いのだけれども無地のカードにサンタクロースとトナカイの絵を書いて大きく『メリークリスマス』と書いた。なんだか七夕の短冊みたいになったけれども私なりには上手く掻けた。
 でもその翌日に私は風邪を引いてしまったのだった。
「明日までに治るかなぁ?」
 壁にかけてあるカレンダーを見る、明日は12月24日、クリスマス・イブだった。

 実は私はクリスマスと言うのを祝った事が無かった。
 お母さんが小さい頃に他界し、お父さんも仕事でロクに家に帰ってこない私にとってクリスマスなんて冬休みの1日と大して変わらなかった。
 今時珍しいとよく言われるけど事実だった。
 そりゃケーキは食べたし七面鳥だって食べた事もある、だけどクリスマス・パーティーを開いても意味が無かった。まさか1人で祝う訳にも行かなかった。
 今まで転校して来た学校では何回か(学校によりけりだったけど)あった。
 その時は学校で持ち寄ったお菓子を食べたりジュースを飲んだりしただけだった。
 プレゼント交換もやった。
 私の用意したのは文房具店で買った1000円の文房具セットだった。
 でも私の元にやって来たのも文房具セット、だけど私のより500円高かった。
「はぁ……」
 本当なら今ごろみんなで部室の飾り付けを手伝っているはずだった。
 みんなで折り紙を買って色々な飾りを作るとか言ってたけど…… 今の私じゃ部室に行く事すら出来ない、
 メールで謝っておいたけれども秀君は……
『気にしないで良いよ』
 とだけ帰って来た。

 翌日も私は熱が下がらなかった。
 外は風が強くて窓がビシビシ鳴っている、
 部屋が乾燥しないように台所に行ってヤカンに水を入れてくるとストーブの上に乗せた。
「ふぅ……」
 布団に入ると私は携帯電話でネット小説を見ていた。
「私の小説、結構人気だな……」
 カウンターを見るともうすぐ200人を突破しようとしていた。
 それは少年科学者リットとロボット少女ミアの2人が困っている人を助けたり様々な事件を解決すると言うお話だった。
「一月前のデートも無駄じゃなかったな……」
 この前これをみんなに見せたら凄く喜んでくれた。
 特撮やロボットアニメみたいに戦う訳じゃ無いから男子には少し不評だったけど、秀君は面白いと言ってくれた。
「……そうだ。今度運搬用の巨大ロボが暴走する話を作ろう、それで2人が事件を解決する」
 それなら多少アクションも入るし、男の子も喜んでくれるはず、そう言ったのも入った方が良い、
「えっと、ノートノート……」
 私はネタ帳を取ろうと立ち上がって机を見る、
「あっ……」
 すると私はもう一冊の方を手に取った。
 それはもう一冊書いてる方の奴だった。
 7月の七夕の時に書き始めた『冒険倶楽部活動ファイル』だった。
 と言っても実際に冒険して起こった事を書き込んでいるだけだから小説と言うより日記に近かった。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki