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冒険倶楽部活動ファイル

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ファイル6 パイレーツ・ワールドの冒険


 それから1月後の9月、
 新学期も始まり他のクラスメートの子達とも顔を会わせた。
 そして待ってもいない勉強の日々が始まった。

 それから2週間後の週末、私達は本土のとあるテーマパークへやってきた。
 その名も『パイレーツ・ワールド』、創立10周年を迎えたこの遊園地の特別イベントに私達は参加する事になった。
「うわ〜、すご〜い!」
 この遊園地のシンボルである海賊船型の建物、キング・ポセイドンの中にある更衣室で私達は着替えを終えた。丁度男の子達の着替えも終り待合室で再会する、ちなみに今の私達の格好は大航海時代の海賊の衣装だった。形と色も皆同じ海賊が着る真っ赤なコートとブーツ、男の子用はズボンだけど女の子はスカートにタイツ、そして腰のベルトにはレプリカのサーベルと銃がぶら下がっている。
「みんな凄く似合うね」
「まるで本当に海賊になったみたいだ!」
「カッコイイなぁ!」
「小道具も良く出来てる〜」
「鯨那君、ありが……」
 私達はここに招待してくれた子を見た。だけど……
「これはオレのだ!」
「いや、僕がやる!」
 その子と十波君はリーダーが被る海賊キャップの取り合いをしていた。2人はどうやらキャプテンをやりたいらしい、
「お前どっちかって言うと主催者側だろ、だったら客に譲れ!」
「今日は完全にオレは客だ! オレはイベントに参加したくてハガキ300枚も送ったんだぞ! それどころか皆は親父が出したけどオレだけ自腹だったんだぞ!」
「おい止めろ2人供!」
「落ち着いて〜」
 龍太郎君が十波君を、舞加奈ちゃんが彼を止めに入る。
「放してくれ舞加奈! オレはこいつと決着をつけるんだぁ!」
 彼が私達を招待してくれた海原鯨那(かいばら・いさな)君、
 このパイレーツ・ワールドの経営者である海原グループの御曹司で十波君の幼馴染だった。
「ダ〜メ〜ェ〜、ケンカしないで〜っ!」
「ジャンケンで決めたらいいじゃん」
 功治君が会話に入る、
 すると鯨那君は十波君を指差す。
「何言ってんだ功治、こいつは運だけは良いって事を知ってるだろ!」
「運だけはって何だ? お前がジャンケン弱すぎなんだよ!」
「何だとこのメガネ!」
「うるさい、カッコ付け!」
 十波君と鯨那君の目から火花が飛び散ったかのように見えた。
 でもこんなにムキになる十波君を見るのは初めてだった。
「はぁ、あの2人顔あわせる度にいつもケンカしてるのよ……」
 羽須美ちゃんと功治君は幼稚園の頃から、
 龍太郎君と舞加奈ちゃんは去年の夏休みにみんなで十波君の家の別荘に遊びに行った時に知り合ったと言う、2人は出会う度にいがみ合い勝負をしてると言う、でも大半は勝負が着かず引き分けになる事が多いらしい、
「それって凄くない?」
 十波君はクラスでも成績トップで運動神経も凄い、
 その十波君と互角なんて……
「とは言えこれ以上続けるってのもね……」
 羽須美ちゃんは両手を上げた。
「あ、そうだ」
 私は閃いた。
 それは2人がキャプテンをやる事だった。
「私も本でしか見たこと無いんだけど、船長が2人いる海賊もあるでしょう? 別に1人じゃなきゃいけないって決まりはないんじゃない?」
 私が言うと2人は肩の力を抜いて目を泳がせた。
「ん、まぁ……」
「河合さんがそう言うなら……」
 2人は納得してくれた。
「だけどな秀、決着はいずれつける!」
「それはこっちのセリフだ!」
 でもあんまり変ってなかった。すると扉からノックが聞えると30代前半の男の人が入ってきた。この人は鈴木さんと言って海原グループの執事さんで鯨那君の御世話係さんだった。
「セバスチャン!」
 ちなみにセバスチャンって言うのは鯨那君がつけたあだ名だった。付けられた本人の鈴木さんは少し恥ずかしそうだった。
「だから鈴木さんに変なあだ名付けるのは止めろ、迷惑してるだろ!」
「何が迷惑だ。執事って言ったら普通はセバスチャンだろうが!」
 それもどうかと思うけど…… すると鈴木さんはコホンと咳をすると気を取り直して私達に言った。
「それよりもみなさま、時間となりましたので会場へ御案内いたします」
「そうか、みんな行くぞ!」
「うん!」
 私達はセバスチャン(鈴木)さんの案内でキング・ポセイドンの専用通路を通って大きな一室にたどり着いた。そこはキング・ポセイドンの艫(船尾、船の一番後ろ)部分で、このパイレーツ・ワールド10周年を記念して作られたイベント『セブン・シー・アドベンチャー』の専用の舞台として改装されたと言う。
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki