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しん よしひさ
しん よしひさ
novelistID. 17130
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たかが映画、されど映画

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しあわせのかおり

 2008年

監督 : 三原光尋
出演 : 中谷美紀、藤竜也、田中圭、八千草薫
脚本 : 三原光尋
音楽 : 安川午朗

 この作品の素晴らしさは、怒りがないこと、主役二人がロマンスに墜ちないことです。
特別なアクシデントも、大げさな音楽もない。
大声を出すシーンはあっても、藤竜也の演技は一定の振幅を踏み出さない。
中谷美紀は、顔の皮膚まで演じています。
狭い厨房の中で日がな一日、伴に過ごす二人。
大概はロマンスの花が咲き、それが作品のポイントになるところですが、そんなことにはお構いなし。
じっと足を据えて黙々と大鍋を振います。
唯一の風景転換は、二人で古酒を買い付けに出かけた上海。
けれどここでも発展著しい上海ではなく、昔ながらの街並みの旧市街と、そこに暮らす素朴な人々の歓待を、優しく深い胡弓の音と伴に描きます。
腰の据わったこの姿勢は、最後まで揺らぎません。
辛い思いを内に秘めた二人は、その思いをことさらに述べることはせず、食材をただ炒め続けます。
この厨房の中で、藤演じる王は、亡くした娘を見つけ、中谷演じる貴子は、遠い日の父と再会します。
蒸気と包丁の音、客の噛む音、そして「お~」の感嘆へと続く。
客も料理人も皆んながおいしい顔をしています。
それが、この作品で私たちが味わうご馳走なのでしょう。
お腹が空いてきました。
お鍋の湯気が恋しくなってしまいます。