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蛇の目

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⑥三日目



時は、竹下政権下、バブル経済も肥大化し、金満日本といわれた時代。
「ふるさと創生」の名の下に、地域活性化のため、地方自治体に
一億円が分け与えられた頃。
齢80 を超えた山本権造は、その名を天下に轟かせていた。

有名ブランド米ヒメゴコロを背景にした巨万の富を手にしたこの男は
社会的名声を使い、この土地の活性化のために、道路、いくつもの治水ダム
電力設備、学校、公園、病院などなど、ありとあらゆるものをこの辺境の地に
もたらした。それまで、痛し痒しな存在であった農協すら、独立させた。
その暴君振りは「ミニ田中角栄」とか「オラが村の角栄先生」とか。
総じてこの土地を「ゴンゾウ帝国」と云われるまでに急拡大した。

山岳部の入り口にはあらたな住宅地が建ち並び、住民も増えた。
除雪車も整備され冬場もバスが運行するようになった。
寄宿を余儀なくされていた子供達も家から学校に通えるようになった。
既に老朽化していた部落の入り口に架かる橋は、新たに架け替えられ
人々は、口々に“権造橋“と呼んだ。
しかし。山本権造の眼は違うところに向いていた。

山をふたつ、みっつ越えた隣の村には、大掛かりなスキー場が整備され
シーズンともなれば新幹線の駅からはシャトルバスが運行し
大勢の客で賑わった。シーズンオフでも温泉目当ての観光客の誘致に成功し
行楽ブームにも乗って、栄えた。
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆