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恋の掟は冬の空

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ゆっくり


「あっち向いててよー」
ドアの向こうから、怒ったような、はにかんだような声を出されていた。
「うん、大丈夫だよー」
直美が服を脱いでいる間に体を洗い終っていたから足を湯船から出しながらお湯につかって背中をドアにむけると、静かにドアが開く音がしていた。
「あっー もう、あったまったら、先に出てよぉー」
「うん、もうちょっとね」
「早くしてくれないと風邪ひいちゃうからぁ、もぅー」
「一緒に入っちゃえばいいじゃん」
「えぇー やだってば、あふれちゃうし・・」
「大丈夫だってば・・」
「あっー やめってってばぁー」
お湯を手ですくって、子供みたいに声を出しながら、直美の体にかけていた。
「もぉー 早く出てよぉー」
「わかった、わかった、今出るから・・」
言いながら湯船から出て、ドアの取っ手を回して外にだった。

「あっー なによー」
「入っちゃおうかなぁ」
外に出て20秒で戻って、直美と一緒の湯船に強引にだった。
あふれ出たお湯の量に少しびっくりしたけど、直美の怒ったようなあきれたような顔を見ていた。
「狭いね」
「もぉー 狭いねとかじゃないでしょう、劉ったら・・」
「だって、入りたかったからさ・・」
「子供じゃないん・・・・」
言いかけた直美の口をふさいで、キスをしていた。
「もぅー・・」
「蛇口ひねって、お湯たしてね、風邪引いちゃうから」
湯船から体をおこしながらだった。
「あっー 逃げるなぁー キス返せないでしょ・・」
「ばー・・・」
口をふさがれていた。
「ばかってないでしょ、こらぁー」
直美の声を聞きながら、ドアを閉めて笑っていた。閉めた向こうで、まだ、何か言ってたけど、そんなに怒ってないのは声の感じでわかっていた。

「あんまりお風呂場でふざけないでよー 転んだらどうするのよ」
「転んでも、こっちの足つかなきゃいいんだってば」
「もう、そればっかりなんだから・・」
言いながら一緒にソファーにすわって牛乳を飲んでいた。
「やっぱり、これって骨にいいのか・・」
「だと思うんだけど・・」
「でも、何杯も飲まないとだな、きっと・・」
「毎日1リットルずつ飲んじゃってよ」
「それってさ、中学生の時に背が伸びないかなぁって、いっぱい飲んでからやってないわ」
「へー そんな事してたんだ・・」
「みんなしてたなぁ」
「で、伸びたんだ・・・」
「いや、全然、俺って小学生から168cmあったから、中学で伸びたの4cmで、高校生で伸びたの1cm・・」
「そういえば、初めて見たときから同じだぁー」
なんかいまさらびっくりしているようだった。
「直美も伸びてないような気がするけど・・」
「あ、私は2cm伸びたもん」
いばるほどではなかった。
「2年生のときが1番太ってたね、直美って」
「えぇー 劉なんか、こっちきてから、すごく太っちゃったくせに」
言い返せなかった。
「ちょっと早いけど寝ちゃおうかぁ」
11時半になっていた。
「うん、そうしようかなぁ」
「ねぇ、今日は、こっちにお布団引いちゃおうかぁ・・」
「いいよぉー たいへんだよぉー」
お客用に布団はあったけど、出すのは面倒だった。
「たまには いいでしょ、病院でずーっとベッドだったから 気分いいかもよ」
「そうかぁ、久々だから、そうしようか」
「うん。これ動かさないと・・」
言いながらソファーを持ち上げて移動させ始めていた。
「お、けっこう力あるよねぇ、直美って」
遅れて片足で手伝っていた。
「歯を磨いてきちゃってよ、布団ひいちゃうから・」
「一緒に手伝うって、一人じゃ無理よ、今の劉じゃ」
「そうかぁ、じゃあ 手伝ってよ」
言いながら一緒にクローゼットから布団を引っ張り出していた。
部屋の真ん中に敷布団だった。
「2枚ひかないでいいって、掛けるほうだけ、2人分でいいってば・・」
「狭いぞぉ」
「横にくっついてるのがいいんだもん」
うれしそうに恥ずかしそうにだった。
「シーツは、おれが やっておくから、歯磨きしちゃっていいって・・」
「綺麗にやってよぉ」
言いながら洗面所にだった。先にさせないと時間がかかるのは経験だった。
四つんばいになってシーツで敷布団を包んで、毛布を2枚と、掛け布団を2枚その上にだった。もちろん真ん中で重なっていた。
「なんか いいね、」
歯磨きを終えて戻ってきた直美がやっぱりうれしそうにだった。
「そうかぁ、ま、たまにはいいか・・」
「劉も早く磨いてきちゃってよ」
「うん、そうするわ」

「劉、早く寝よう」
戻ると布団の中から顔だけ出したかわいい直美が待っていた。


作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生