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恋の掟は冬の空

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新宿のデパートで


「すいませーん。柏倉ですが出かけてきまーす」
ナース室の前で、声を上げていた。
「あ、はぃ 気をつけてくださいね。無理しないようにね」
人影が見えなかったから、大声だしたら、奥から婦長でちょっとあせっていた。
「あ、はぃ ありがとうございます。明日は夕飯前には戻ってきますので・・」
「はぃ。いってらっしゃい」
「では 出かけてきます」
苦手ではなかったけど、やっぱり婦長だから緊張して、けっこうな足早だった。

1階に降りて、玄関を出てバス乗り場に向かっていた。ここから新宿までは松葉杖がなくても歩くとたぶん15分以上はかかる距離のはずだった。自信がなかったのは、ここには救急車で来ちゃったし、駅までなんか1度も歩いたことがなかったからだった。
バスは循環で、この病院と新宿駅だけを往復だった。
バス乗り場には 人がけっこう待っていたけど、松葉杖だったから小さなベンチのスペースまで空けてくれる人までいた。
5分もしないでやってきたバスに、手すりをつかんで乗り込んで椅子に座ると、あっという間に新宿駅西口だった。
駅前にはデパートは二つあったけど、直美がこの前お弁当を買ってきたほうの店にすることにした。たぶん、きっとそれが正解なんだろうなぁって思っていた。
「あっー」
声を入り口で出していた。
どうにも買ったものは手に持てないことに、やっと気がついていた。
人ごみの中で、少し笑いながら3.5本足で立ちつくしていた。
「あっー」
声がまた出ていた。
30秒ぐらいその場に立っていたけど、目の前の人を見てだった。

「えっと、背中に背負うバック欲しいんですが・・何回に売り場がありますかぁ」
斜め前に総合案内のおねーさんだったから、けっこう唐突に聞いていた。
「ここ1階にもありますし、5回のスポーツ用品売り場にもございますし、3階の紳士売り場にもございます」
あせって顔を近づけて聞いたので、椅子を少し後ろに下げながら答えられていた。
「ありがとうございます」
あわてて、顔を引きながらだった。
「いえ、エレベーターはこの右奥にございますから」
松葉杖の俺に向けての親切だった。
頭をさげて、歩き出していた。気が付く人はけっこう道を空けてくれたから、思ったよりは歩きやすかった。
当然向かったのは5階の売り場だった。今日はどう考えても大き目のバッグが必要だった。
エレベーターはすぐにやってきたから中に入って背中を壁に押し付けて休憩しながら上にだった。
スポーツ用品売り場は朝も早かったから、けっこう ガラガラだった。
「あのー 背中に背負うバッグ欲しいんですけど・・」
背の大きな店員に聞いていた。
「こっちですけど・・」
言いながら、一緒に連れていってくれるようだった。
「このへんですね。何か お探しのメーカーでもありますか・・」
「いえ、これよりもう少し大きいのがいいんですが・・」
「登山とかですか・・・」
この足で 登山ですか? って聞くのどうなんだろうって・・笑いそうだった。
「ちがうんですけど・・」
言い終わらないうちに、さっきより大きいバッグを持ってきてくれていた。
「これぐらいで よろしいでしょうか」
思った大きさだった。
「あ、これが いいです。これください」
「あのー 色も他にございますが、こちらでよろしいでしょうか」
目の前のは 紺色だったから これでよかった。
「これでいいです。おいくらですか・・」
値段を見ていなかった。
「¥9800になります」
予算オーバーだったけど、これがないと、どうにもの俺になりそうだったから、財布からお金をだしていた。
「あのー 今すぐ 使いますから、全部中身とかタグとか外してもらえませんか」
「は、はぃ」
不思議そうな顔を最初してたけど、すぐに理解したみたいだった。
レシートと一緒に、ていねいに椅子まで俺にさし出してくれて、肩紐の調節までして背中に背負わせてくれていた。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえ、大変ですね。お気をつけてお帰りください」
丁寧に頭を下げられたから。こっちも丁寧に頭を下げていた。
背中にバックでまた エレベーターで地下にだった。
これからが 本番だった。
地下に降りると、早い時間なのに、ここは結構混んでいて、それで、通路もせまくて、歩きずらかった。
どこに、どんな店があるのかわからなかったから、とりあえず1周しないとだった。
みんなうまそうで、悩みそうな俺だった。
歩きながら、これから大変そうな気がしていた。
だって 病院を出てからもう1時間も経っていた。まだ、カバンしか買っていないのにだった。


作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生