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恋の掟は冬の空

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クリスマスイブは動いて


24日の朝になっていた。青空になりそうな天気だった。
病室の大きな窓のそばに立って空を見上げてそう思っていた。
ホワイトクリスマスにはほど遠い天気だったけど、松葉杖の足にはありがたい天気だった。
「どうですかぁ 天気は」
浩君がベッドの中から眠そうな顔をだしていた。
「いい天気になりそうだよ。良かったね」
「良かったねって言われても・・雨よりは、まー なんとなくいいけど、晴れててもここから出れないし・・微妙な感じかなぁ・・」
「雨空見ながら、ここにいるよりは晴れてるほうがいいだろ」
雨の病棟生活はなんとなく嫌いなことだった。
「そうなんだけど、ほら天気いいと、みんなどっかで遊んでるんだろうなぁって思ったりして、なんだか仲間はずれみたいで・・」
「そんなことはないだろ」
「だって今日なんか 、クリスマスイブですよぉ。なんか余計に思うもん。彼女なんかいなくても、家でうまいものぐらいは今日は食べたいですよ」
うんうんってうなづきながら、確かにそうだって思っていた。
「柏倉さん、何時ごろに出かけちゃうんですか」
「うーん 10時前ぐらいかなぁ。買い物もしたいし、あんまり早くでもラッシュでしょ、電車が・・。この足だし混んでる電車は無理でしょ」
「車じゃないんだ・・どこでしたっけ、家って・・」
「小田急線の豪徳寺なんだけど、駅からは少し歩いちゃうかな」
「大丈夫なんですかぁ」
大丈夫かどうかは、自分でも疑問だったけど、あんまり考えてなかった。
「わかんないけど、きっと大丈夫だろ。疲れたらその辺で座っちゃうから、俺」
「恥ずかしいっすよ、それは・・」
笑われていた。
「ま、大丈夫だって」
「あーぁ いいなぁ 外泊だもんなぁ・・」
返事をするのは遠慮していた。
「お、朝ごはんが来たかぁ・・夕飯の時間が早いからほんと腹ぺこですよ、いっつも」
廊下から食事が運ばれてくる音が聞こえてきていた。
「持ってきてやろうかぁ」
「いいっすよ。ひっくり返されたら悲しいですから。きちんと運んできてもらえますから」
言いながら浩君はもう、ベッドの背中を起こして、テーブルを用意していた。


「柏倉君、今日外泊なんだよね。あっ、もう着替えたんだぁ・・」
朝ごはんを食べて、時間つぶしをして、着替えを終わったら工藤主任だった。
「はぃ、すいません。気をつけて帰ってきます。急に昨日お願いししました」
「あんまり無理しないようにね。明日は何時ごろに戻ってくるの・・夕飯ぐらいに戻って来るのかしら・・」
「はぃ あんまり遅くならないように夕方には戻ってきますから・・」
「そっか。じゃあそれで連絡しておくから」
言いながら、ファイルに書き込んでいるようだった。
「もう、これから出ちゃうのかな・・」
「あ、はぃ。そろそろ、出かけます。買い物をしたいので・・」
「ほぉー 直美ちゃんにプレゼントかぁ・・いいなぁ・・」
「いえ、それはもう買っちゃったんですよね。外泊なんか出来るの忘れてたから、親戚の叔母にたのんで・・今日は夕飯の材料でも買っておこうかと・・この足だと台所は無理っぽいんで、お惣菜買うだけですけど・・」
「へぇー もうプレゼントは用意してあるんだぁ。何をあげるの、教えなさいよー」
「それは 内緒ですから、ダメです」
「あーぁ いいなぁ」
この時間だから、工藤主任も日勤で夕方には帰れるのにって思っていた。
「あのー クリスマスプレゼントってナースから俺らにはないんですかねー」
工藤主任の後ろから、浩君だった。
「毎日、めんどうみてあげてるじゃないのよ、彼女でもないのに・・まったく・・私にプレゼントの間違いじゃないの・・」
笑いながら、けっこう大きな声で振り返りながら答えていた。
「うわぁ」
おおげさな声を浩君は出していた。
「まったく、もう・・じゃぁ、出かけるときには、一応ナース室にも、また声かけっててね」
「はぃ なんかお土産買ってきますから・・」
「いいわよー そんなものは・・では、お大事に、気をつけてね。直美ちゃん柏倉君が帰るの知らないんだってね、喜ぶねぇー 良かったね。よろしく言っておいてよ」
言いながら、けっこう笑顔で病室から廊下に向かっていた。工藤主任もデートなのかなぁって少し考えていた。

「まだ、柏倉さんっていますかぁ」
入れ違いに夕子の声だった。
昨日はなぜか男の子が遊びに来て、帰りに部屋に寄らなかったから少し気になっていた。
「まだ、いるけどぉ」
「あ、いたぁ。今、聞きました、外泊なんでしょ」
「うん。これから出るところだけど」
「いいなぁ・・私はだめもとで、許可お願いしたんだけどやっぱりだめだったんですよぉ・・」
残念そうな顔をしながらだった。
「聞いてもいい・・」
やめようかなぁって思ったけど小さい声で聞いていた。
「いいですよぉ。わからない英語の単語でもありますか・・」
何を聞かれるのか わかっていそうな気がしていた。
「いや、そうじゃないんだけど・・昨日来てた男の子が夕子ちゃんの好きな人なんでしょ・・」
「うーん えっとぉー」
すごい笑顔だった。
「やっぱり・・そうなんだぁ・・」
まだ、笑顔の夕子だった。
「恥ずかしいなぁ・・手紙書いたら、返事を自分で持ってきちゃいました。あの人・・」
夕子の頬がピンクに染まりそうだった。
「好きな人っているらしいって聞いたんですけど、だれですかぁ・・って手紙書いたら・・」
「はぃはぃ もう いいですから」
もう 聞かなくてもって感じだった。
「昨日すぐ 報告こようかなぁ・・って思ったんだけど、恥ずかしかったのでこの前を何回か、いったりきたりして、やっぱり病室に帰っちゃいました」
「そっかぁ 良かったね」
「はぃ 直美さんに、 言っちゃいなさい、きちんと って言われてよかったぁ・・ 報告しといてください、今日」
「うん。喜ぶよ、直美も、きっと」
恥ずかしそうにうれしそうに、夕子はうなずいていた。
「でも、なんで、今日じゃなくて、昨日なんだろ・・返事を自分で持ってくるの・・」
「今日だと、クリスマスイブだから 恥ずかしいって、少しわけのわからない事言ってた」
かわいい笑顔だった。
「これ、もらっちゃったんです」
言いながら、首からシルバーのネックレスだった。
赤いパジャマの下から出して うれしそうに眺めながらだった。
「綺麗だね、似合ってるよ」
「直美さんのクロスに宝石が付いてるのも、すごく綺麗ですよ。高かったでしょ、あれって・・」
「あれは、俺じゃなくて、俺の叔母さんからだから・・」
春に赤堤の叔母が直美にプレゼントのネックレスの事だった。
「そうなんだぁー ずーっと、柏倉さんのプレゼンとかと思ってました。じゃぁ 今日は何をプレゼントなんですかぁ」
「うーん。買ってあるんだけど、今日、外泊できるとは思わなかったから、その叔母さんの家に預かってもらってるんだよね。で、それね、俺が1人では運べないから退院の日にプレゼントすることになっちゃうなぁ」
「へぇー わかんないなぁ・・なんだろう、教えてくれないんですかぁ」
「直美が見るまで、内緒にしたいから、内緒。ごめんね」
えぇーって顔の夕子だった。
「じゃぁ そろそろ、俺行くからさ」
作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生