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恋の掟は冬の空

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少し相談に


夕飯を食べて、暇にあかせていると夕子が遊びにきたようだった。
「今、ヒマですか、柏倉さん・・」
「そりゃぁ 食事以外は、ヒマなんだよね、ここの生活って・・」
少し笑われていた。
「これ食べませんか・・あ、それとこれ新しいのが今日出ましたから・・」
出されたのは、コーヒーゼリーとマンガだった。
「お、これって、この前の続きだよね・・」
「はぃ 今日発売だから、さっき買ってきました」
「そっかぁ、夕子はもう読みおわったの?」
「まだ読んでないです。直美さんに勉強教わってるような受験生がマンガばっかり読んじゃいけないでしょ・・」
確かにページをめくった跡はなにもないようだった。
「でも、たまには 息抜きしないと、疲れちゃうでしょ」
「それは、そうなんですけど・・」
なんか、今日は少し疲れたような夕子だった。
「あ、食べちゃっていいかなぁ これ・・」
「どうぞ、私はさっき 食べてきましたから」
ベッドに座りながら高そうなコーヒーゼリーを食べることにした。
「で、なんか夕子ちゃん なにかあったの・・元気ないように見えるけど・・」
なんとなく、そう感じていた。
「うーん あのうですね、今日、終業式みたいで学校、それで明日から冬休みになるらしくて・」
「へー そうなんだ」
「だから 今日も友達がお見舞いに来てくれてたんだけど・・」
確かに昼間に夕子がロビーで友達と遊んでいるのを見かけていた。
「うん。いいじゃない」
まだゼリーを食べながらだった。
「そりゃぁ うれしいんですけど・・けっこう疲れたりするんですけど・・変ですかぁ」
「疲れちゃうかぁ・・そうかぁ・・」
確かに入れ替わりだと俺もそうだった。ま、夕子ほどはお客は来なかったけど。
「今日も 午後からは、ずっと落ち着かなくて・・予定がくるっちゃって・・勉強してないんです」
「そっかぁ・・でも冬休みに入ったばっかりだからで、また少なくなるんじゃないかなぁ」
「そうかなぁ・・そうだといいんだけど、でもきっと続くと思うんだけど」
受験が迫ってきて少し不安になっているのかなって考えていた。
「でも、夕子のところに誰も来なかったら さびしいでしょ」
笑顔をつくっていた。
「そりゃそうですけど。それとこれは少し違うんですけど・・あのう 柏倉さんてこの時期どんな生活で、どうやって勉強してましたか・・」
聞かれていた。
「うーん。今ぐらいの時期かぁ・・えっと学校あるときは、家に着くのが4時半頃か・・で、夕方までは勉強してるような気分で机の前で遊んで、夕飯食って、テレビ見て、夜の9時からまた机の前で勉強してる気分だけで、10時になったらやっと勉強始めて11時になったら直美に5分ぐらい電話して、また 始めて・・えっと2時半ごろまでか・・」
自分で考えながらだったけど 勉強ってほとんどしていなかった。
直美との電話は昔は10時だったけど受験が迫った頃から11時に変わっていた。
「それっ本当ですかぁ・・勉強って夜の10時からだけなんですかぁ」
「うーん 気持ちはしてた記憶なんだけど・・実際は真剣には10時から3時間ちょっとぐらいだね」
「直美さんって どうだったんですかぁ」
直美の事までだった。
「うーん。正確にはわからないけど、直美はね夕方少しだけ勉強して、夕飯食べたら寝ちゃうのよ・・で、夜の11時に起きて、それから勉強だったかなぁ・・どれくらいまでなんだろ3時ぐらいまでなのかな。それから寝てたと思うけど」
「そんなもんですかぁ・・・二人とも出来たんですね。勉強・・」
感心されていた。
「いやーそんなことないって・・きっと俺なんかより夕子のほうが偏差値いいと思うんだけど・・」
たぶん そのはずだった。
「あのさ、1日に8時間も9時間も、真剣に勉強なんて出来ないんだと思うんだよね・・あ、これって、俺の意見だからね。で、ここって午前中はずーっとヒマでしょ、夕子も。そこで勉強してさ、午後に面会時間は休憩タイムでいいんじゃないかな・・それに夕方はもう友達帰っちゃうでしょ。夕飯すんだら、また出来るじゃん。それってけっこうトータルすると時間あるよぉー。確かに静かじゃないから大変だとは思うけど・・」
「言われりゃ、そうなんですけど・・なんか、気持ちが落ち着かなくて・・」
受験生はみんなあせってるのに、夕子は入院生活なんだからもっとに決まっていた。
「がんばってよ、ありきたりの言葉だけどね。お見舞いの時間は休憩時間なんだからって考えれば、ちょうどいい時間じゃん。ずーっと朝から寝るまでなんて勉強なんか集中して出来るわけないんだからさ」
「そうですかぁ。そう考えればそんな気も・・」
少しだけ 明るい顔にも見えてきていた。
ふざけてたわけではなかったけど、わざとゼリーを食べながらだった。
「みーんな 今の時期は受験生って夕子と同じように、不安なんだっば・・今はあせらず、少しずつ、しっかりよ。あれもこれもできないんだら・・」
自分でもこの時期は、たしかに不安定な気分だったことを思い出していた。あれもこれもって考えて、なに勉強すりゃぁいいんだかの時期だった。
「そっかぁ・・なんのどこを勉強すればいいのか、不安なんですよね・・」
「みんな、一緒だから そんなの。気にしないでいつもどおりにだね」
「はぃ そう考えてみることにします。あ、なんかグチ言いに来ちゃったみたいで・・そんなつもりじゃなかったんだけど・・」
やっと笑いながらだった。
「おいしかったわ、これ」
食べ終わったコーヒーゼリーだった。
「けっこう ここのは地元で評判ですから」
「そっかぁ。 で、今夜は勉強しないの、これから・・」
「うーん、今は休憩時間ってことで・・リフレッシュします」
いつもの笑顔に戻ってきたようだった。
「はぃ じゃあ、日本茶ね」
コーヒーゼリーの後に日本茶はどうかだったけど、一緒に夕子とゆっくりのお茶の時間だった。
気分転換になれば ありがたかった。

それから10分ぐらい話をすると夕子は車椅子で部屋にもどっていった。
同部屋で入院している高校生3人はみんなで、「いいなぁあ かわいいもんなあぁ  きったねええ  」
とかうるさかった。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生