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その後の、とある日曜日の話

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「これ……でしょうか?」
「そうそ、それ。今から赤外線でわたしのプロフ送るから」
「セキガイセン…ぷろふ……?」
言うままわたしは自分の携帯電話から、エミィの携帯に自分のプロフィールを丸々送信する。すると、エミィは何をしたのか把握したのか、表情がぱあっと華やいだ。
 エミィの携帯画面を覗くと、『akio.s』と、アルファベットの硬質な文字と電話番号、メールアドレスが羅列されている。
「まあ、こうすれば連絡先がわかるのですね!」
「そうそう、えーっと…事務所?との連絡用だろうから、あまりそこの人には言っちゃ駄目だよ。名前はエミィのわかりやすいように替えておいていいわ。わたしの名前、登録しておかないとわたしから掛かってきたってわからないでしょ」
そう言うと、エミィは「アキさん、ありがとうございます」と、深々とお辞儀をされてしまった。カンカンまでもが、ぺこりとお辞儀をしている。え、わたし今そんなに感謝されることしてないんだけど。
「いいよ、頭上げて。…それよりエミィ、今はちゃんと帰るところあるの?」
「ええ、この先の…」
「いいよ、言わなくても。今度よかったら案内して」
ウインクすると、エミィは嬉しそうに「はい」と、言った。

「それじゃ、また」
「はい、失礼致します」
エミィは恭しく頭を下げると、大きい通りの方角へと歩いていった。改めて、エミィから渡された名刺を見る。なんの事務所なんだろう…やっぱり、芸能事務所?エミィってそっち系の子だったのかしら。
 正直なところ、エミィにはそれ以上に聞きたいことが山ほどあった。最初はただの、海外の血が入ってる日本育ちのお嬢様ぐらいにしか思っていなかったのに、突然日本語じゃない言葉を話し始めて、そして突然いなくなってしまったのだから。
 けれど、彼女の姿を見て、言葉を交わして、元気な姿を見ることが出来て…何だか、もういいかなって気になっちゃった。世の中、色んな境遇の人がいるもんよね。わたしだってそう、少なくとも一般的な人生は歩んでいない。あの靴磨きだって、エー介くんだって、見るからにあまり普通じゃないわ。
 じゃあ、普通ってどんなこと?……駄目だわ、普通、だなんて、その言葉を使った時点で、わたしは周囲を否定していることになるというのに。普通と、普通で無いことの差なんて、本当に紙一重だ。そんなこと、一番わたしがよく知っているはずなのに。
 ふと、通りで店仕舞いを始めているカキ氷屋を見つけた。あ、そうだ。わたしは、屋台へと駆け込んだ。こんな日だ、最後にあの人を訪ねてから、帰ろうっと。思えばまだ、きちんとお礼を言えてないし。

「おじさん、イチゴとメロン一つずつちょうだい!」