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ペンギンと暮らす

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 夏の暑い日、わたしはペンギンと一緒にプールに行きました。
いつもなら近所の市営プールだけど、今日はちょっと遠出して、郊外の大型ウォーターランドです。
悲しいかな、わたしは泳げないので、ざぁざぁ波のあるプールで浮き輪にぶら下がりゆられるのが今回の目的です。海とか波のあるプールとかに一日中浸ってたら、その日の夜も体がゆられてる感じがしてすごく気持ちいい。わたしがそれが好きなのです。いっぽう、ペンギンは、競泳をやっている猛者たちが集う競技用二十五メートルプールで誰よりも楽しんでいるようです。平泳ぎなのに、どうしてあんなに早いんだろう。小麦色の肌をした筋骨隆々ですばらしいギャランドゥを持ったビキニパンツの男性も、今日のペンギンと比べたらかすんでしまいます。あぁ、素敵。あれ、わたしの恋人なのよ。設定上だけど。
 ひととおり泳ぎ終えたペンギンが、プールから上がって、こちらにぺたぺた歩いてきました。鋭い羽毛いからむ水滴が、太陽の光を浴びてキラキラ、まさに水も滴るいいペンギン。皆の視線も釘付けです。
大声で自慢したい。あれ、私の恋人なのよ!

 ある日、わたしはこんな実験をしてみました。
リビングの目立つところに目立つように。結婚情報雑誌『ゼクシィ』を置いてみたんです。それも、おもむろにポストイットを付けて、真剣に読み込んでいるかのように。
 これは、先輩から聞いた話でした(『ゼクシィ』も先輩から借りた)。何でも、九年来の彼氏が、なかなかプロポーズをしてこない。でも彼に結婚する気がないわけじゃないのは(なんともややこしい)、言動を見て明らか……。そんな時に、『ゼクシィ』だ。わざと目に付くところに置いて、彼氏を焚きつけるのである。
 わたしとペンギンは、結婚まで秒読み、という設定ですが、いったいペンギンはどういう反応を見せてくれるのでしょう。
 ……一日が終わっても、二日経っても、ペンギンは『ゼクシィ』に興味を示しません。そりゃそうかー。

作品名:ペンギンと暮らす 作家名:塩出 快