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わたしには生まれてこのかた浮いた話などひとつもなく、現在の同居人なんて、なんとまあ色気のないペンギンです。イワトビペンギンではないです。普通のペンギンです。これがイワトビペンギンならときめきもするんですけどねぇ。彼らことごとくイケメンだから。
　フォークランド諸島出身の彼は、場所に対する愛着がものすごくて、わたしがこの部屋を借りたにも関わらず、一向に出て行く気配がありません。
　仕方ないので、わたしは彼を運命の恋人だという設定を後付けて、ルームシェア……いえ、同棲することに決めたんです。ちなみに、結婚までは秒読みです。

　ペンギンはイワシ、イカ、タコなどが好物です。
特に、『魔女の宅急便』でおばあちゃんが作っていたイワシのパイを作るととても喜びます。でも、わたしこれ好きじゃないのよねぇ。
結婚のことを考えるとそうも言っていられないので、わたしもペンギンに合わせて同じものを食べます。
わたしの好き嫌いで、お父さんとお母さんが別々のものを食べてるのを子どもに見せるのなんていやだもの。
それに、夫婦円満の秘訣は、出されたものは毒でも食え、よね。わたしが出す側なんだけれども。