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製作に関する報告書

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というルールを作ることもそう。一見合理的でクレバー。けれど本質を理解していない。長期的な展望は持たないということですから。そんなルールで縛れるような作り手は結局その程度のもの。いずれジリ貧なっていくに違いない(この辺り吉田氏と柴田氏は似ていますね。同じような匂いの持ち主であると私は思っています)。
 
志倉氏もヒューマンでしたか、潰れた会社の人間だったといいます。それを親分の米澤という人が引っ張ってきた。
 
『吉田は潰れた会社の人間を引っ張ってきて子会社の社長に据える』
 
『子会社社長に据えられた志倉は潰れたKIDの残党を引っ張ってきてスタッフに据える』
 
負のピラミッド。しかも結局は原価計算を教えても結局利益は出ない。100円の原価で120円稼げる人間ならば原価計算を教える価値はある。けれど100円使って70円しか稼げない人に原価計算を教えても意味は無いですから。5pb.もそうですしハルフィルムもそう。TYOのほとんどすべての子会社、映像製作会社でも利益など出ていなかった。買収はほとんどすべて失敗。もともと話題を作って株価を維持するためにやっているだけですから、会社を立て直して利益を出せるようにするノウハウなどTYOにはなかったのでしょう。ですからこそTYOの自己資本比率はマイナスになり、ついにはフィールズフィールズ傘下となってしまった(提携と奇麗事を言ってますけれど要するに身売りでしょう。いずれにせよ独立吉田商店の歴史は終わったということでしょう)。
 
吉田氏に関してはいろいろと発言が残されていて、ですから人物を見て取ることができます。たとえばそれは、円谷買収に際しての、
 
『いいシナリオかどうかは見れば判る』
 
とか。吉田氏は以前ですが自身がハリウッドで監督デビューを果たしたことがあったのだそうです。いったいどういうコネを使ったのかは存じませんが、結果は惨敗。一作か二作を作っただけで逃げ帰って来たのだとか。で、以後は社長業に邁進するようになったのだそうです。何をやっているのかと思います。何故、映画に賭けると決めたのならばその道をまっとうしないのか。会社は誰かに譲って自分は最後までハリウッドに留まればよろしい。でもそうしない。すぐに折れて逃げ帰ってくる。
 
『会社の金を利用し、コネを活用する。けれどそれは作品を作りたいがためではなくて単に自分の名声を高めるため。で、最後は失敗』
 
そういう人間が言うのです。
 
『いいシナリオかどうかは見れば判る』

と。自分で言っていてブザマなことだとは思わないのですかね。映画に夢をかけている人たちに対して顔向けができないとかそういうことも思わないのか。 
 
学生時代には作家に憧れていて、けれどなり切れず、逃げ出してきたというようなことも書かれておりましたが、吉田という男はいつでも逃げる。あと半歩踏み込めばいいと思うのですが。
 
『二流の人材でも原価計算を教えれば云々』
 
再び三度の引用ですが、この立派な発言も多分本質は違う。
 
『一流の人材には来て欲しくない。そんな人材はいらない』
 
のでしょう。なぜならば、
 
『一流の人材が部下になれば自分が目立てなくなってしまう。それは悔しい』
 
というのが吉田氏の本音であるから。本当であれば、
 
『二流お断り。一流だけで結構』
 
だと思うのですが。本心が違うのです。いつも綺麗にごまかす。本当の心、醜い本心を美辞で飾る。醜いものを醜いままに吐き出せばいいと思いますがね。本当の気持ちであるわけですから。
 
『現場を離れて以降は社長業に邁進、マネジメントに打ち込む』
 
という自身の弁も、これも奇麗事でしょう。本心はそうではない。
 
『一流の監督や作家になりきれなかったルサンチマンを自分よりも劣った人間の横面を札束ではたくことで癒す』
 
ということでしょう。そんな人物のところにまともな人は集まらないですし成功も訪れない。愚将の下には弱卒ばかり。
 
おさらいに一連の流れを時系列で書くとこういうことなのでしょう。
 
 ?吉田、抜きがたい劣等感を抱く(194、50年代の話ですね)。
 ?吉田、学生時代に作家に憧れる。中上健治に出会う。挫折。当時走りだったCM業界へ。
 ?業界独立。普通であれば劣等感やルサンチマンは解消されるはずもなぜかならず。
 ?大見得を切ってハリウッドへ進出。失敗。遁走。
 ?クリエイターになりきれぬルサンチマン高まる。
 ?経営者としてクリエイターを使う立場になることで自分の傷心を癒そうと画策。
 ?株式公開。直後に株価急落。
 ?ITバブル到来。株価急騰。吉田、会社破綻の恐怖から事業拡大へ
 ?志倉等二流の人材を集めて子飼いにする。
 ?株価急落。円谷等潰れた会社(加えて知名度の高い会社)を買い取ることで自己の存在をアピール。何とか株価を上げようと必死の努力。株価上がらず。
 ?メモオフ製作においてトラブル(今回の手記の内容ですね)
 ?首領蜂出荷停止等5pb.でトラブル続出
 ?5pb.と同系列会社朱雀で海腹川背製作に当たって訴訟トラブル。
 ?サブプライム直撃。TYO株価100円を割る。
 ?5pb.朱雀切り飛ばされる。
 ?集めてきた会社を銀行からの圧力で清算、あるいは吐き出し。TYO白色矮星化
 ?フィールズに泣きつき資金を恵んでもらう
 
 私らは今の時点でしか会社や人を見ませんから何がどうなっているのかわからない。けれど、流れを追っていけば、私とKIDの残党と呼ばれる人たちが起こした諍いの意味も得心が行く。衝突は、どちらが悪いというのでもなくて、ただ、そういう風周りの中で必然的に起こったことだったのでしょう。物理法則として起こらざるを得ないから起きた。そしてそれは吉田博昭という男の物語。吉田が幹。役員を放逐された米澤という男の野心の物語が枝で、私や市川、志倉の5pb.の物語は結局、葉の部分。葉が揺れたのは枝が折れかかり幹が腐っていたから。ただそれだけのことなのです。そしてそれはユーザーの皆さんにとってはどうでもいいことなのです。
  
 さて、ながながと書いてきましたがこれで本当におしまいです。手記を公表するかについては少しだけ悩みました。市川氏と取り交わした覚書の中には、作業内で起こった事に関しては口外をしない旨の一文を付け加えておきましたが(そのかわりにあちらは私が作った細かいプロットなどを使いまわししないという約束でした)その約束はあちらの都合によって一方的に破られてしまっていましたし、5pb.という組織がTYOから斬り飛ばされた今となっては約束を守り続ける意味もないでしょう。私は、
 
 『TYOの子会社5pb.』
 
 に雇用されていたのであり、
 
 『TYOの貸付金に拠って立つ5pb.』
 
 に雇用されていたのであり、つまりは、
 
 『TYOに多額のお金を投資してくださった株主の皆さんに信託を受けて仕事をした』
 
作品名:製作に関する報告書 作家名:黄支亮