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ツカノアラシ@万恒河沙
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ひとくいのかがみ

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そして、書斎の主の聖玲のご登場。男物の黒い和服に羽織を羽織った華奢で小柄な姿が螺旋階段の上に現れた。烏の濡れ羽色の黒髪の下から覗く吊り気味の杏型の大きな目に、ぽってりとした紅を差したかのように朱い唇。まるで人形のような端整な顔を持つ探偵は階段の上から神田川を見て花がほころぶようににっこりと笑った。どうやら、今日は『少年探偵』らしい。探偵は、執事の趣味で、ある時は『少女探偵』だったり、またある時は『少年探偵』だったりする。神田川は、未だにこの人物の正確な年齢と性別を知らない。ただし、本人が言うにはこんな事をするのには理由があるそうだが、如何せん言っている人物が非常に信用ならない人物なだけにまともな理由ではあるまいとは神田川はにらんでいる。おそらくたぶん、神田川は間違っていないだろう。
そして、その慇懃無礼な態度と少々性質の悪い性格から周囲から小悪魔と称される探偵はその可憐な姿に似つかわしくない、ラヴェルのボレロ終結部が流れてきそうな位に威風堂々な態度で、背後に畏まった執事を従えて優雅な動作で階段を下りてきた。これで、両側から悪魔がファンファーレでも鳴らせば、ゴシックなホラーの舞台装置としては完璧だろう。
探偵は図書室の自分の椅子に座ると、今すぐにでもどこかの舞台にに出演することができそうな位に完璧な執事がスクランブルエッグとベーコンが載った皿と、紅茶とクロワッサンをマホガニー製の机に置く。どうやら、探偵の朝食らしい。非常に優雅な生活で羨ましい限りである。
「それで何で、そんな鏡を持っているんですか」
神田川の手元を玲は片眉を引き上げ目を細めいかにも胡散臭い表情をしながら見た。胡散臭げな表情ではあるが、頬に手を沿え唇には面白そうな笑みを浮かべている。どことなく、非常に楽しそうだった。神田川の手元には、人の頭程の大きさの鏡がある。鏡は縁に苦悶したガーゴイルを彫ったような凝った飾りがついていて、いかにも玲が好きそうな物であった。
「昨日の夜、見知らぬななしの差出人から贈られてきた。何か見えるのか、君」
神田川は恐る恐る尋ねた。玲は人には見えない何かが見えると言う話である。一体全体、鏡に何を見たのだろうか。その実、神田川はあまり聞きたくはないのだが、ここで聞いて置かないと後で後悔しそうだった。多分、いや絶対に死ぬほど後悔するだろう。