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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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ひとくいのかがみ

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深夜に私の家に訪れた謎の配達人は下を向いたまま、無言でななしの差出人からの贈り物を差し出した。
ななしの差出人から贈り物がきた。その日は非常に疲れていて、いつになく恐ろしく寝ぼけていた。いつもならば差出人を確かめてから荷物を解くのに、その時に限って何故か差出人を確認せずに開けてしまうと言う間違いまで犯してしまう。大きくて平たい桐で作られた箱の中からは、鏡が一枚現れた。鏡の縁に苦悶するような化け物のレリーフが彫られた鏡は、底意地の悪いくらい不気味だった。あまりに不気味なので、そういう事に詳しい友人の聖玲のところへ持って行くことにした。
ここは、『清廉潔白探偵事務所』。警視庁猟奇課警部である凡庸、甘党、被害妄想と三拍子揃った神田川一生氏は、早朝から煉瓦造りのレトロな5階建てのビルの5階の銀色のペンキで『清廉潔白探偵事務所』書かれた硝子が嵌った木製の扉の前に大きな包みを持って立っていた。扉を開けると、神田川をこれまた古色蒼然としたビルに相応しい古風なお仕着せを着た村雨と松風と言う名前の美人メイドさんがぎこちない笑みを浮かべながら出迎えてくれる。彼女らは恐るべき美女ではあるが、異常に顔色が悪く少し無表情なのが難であった。
神田川は、通常の依頼人は滅多には通される事はない探偵のご自慢の図書室に二人の女中さんの先導で案内される。そして神田川は一見すると人のよさそうな優男に見える性悪執事が用意したお茶とお菓子を戴きながら、ここの主である探偵のお出ましを待っていた。探偵は、朝が滅法弱いのである。もしかして、真夜中に散歩でもしているのだろうか。しかし、朝が弱く身の回りの世話を焼く者がいなければ日常生活が送れないほど生活能力に欠ける探偵なんて、あまり実社会では役に立たないような気がするのは気のせいだろうか。因みに、ここの探偵は正体不明ではあるが、優雅に生活できるだけの資産があるらしく、気に入った猟奇怪奇な依頼しか受け付けてくれないと言う注文の多い困ったさんである。神田川は森の中で迷子になったことから、この人物と知り合いになり、現在に至っていた。
出会いは誰も行かないような森の中の牢獄のような屋敷。