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南の島の星降りて

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セイント・ホース


デザートは、まだこれから飲みに行くからって言って断って店をでた。
いくらぐらいだったんだろうかと思ったら、麗華さんはお金も払わずにサインで店をでた。
「払わないんですか?」
「いいの、ここはいつもお父様が払うから・・」
そんなもんかなーと思っていた。
「さ、歩くよ、ここから5分ぐらいだから。次の店」
後ろをついて行くと
「横を歩いてよ。デートなんだから」
麗華さんはほんんり赤い顔で笑っていた。
まだ、時間は10時前だったので、下北沢の狭い道は混んでいて横を歩くのはちょっと大変だった。
ぴったりくっついて歩いていると麗華さんの腕が自然と俺の腕に絡んでいた。
「俺はいいですけど、麗華さんが誰かに見られても知らないですよ」
「あらぁ。いいじゃない。新しい彼氏って紹介しようか?友達に会ったら。誰かに会うかもよ」
「だめっすよ。やばいっすよ」
もう、それを言うので精一杯だった。
「あそこだけど。知ってる?劉ちゃんも?家近くだから下北もよく来るんでしょ?」
指差した店は俺もよくいく見せだった。びっくりした。
「ほとんど、下北か、学校が江古田だから、池袋ですね。飲むのは・・」
「そっか。私はほとんど下北だよ」
麗華さんの家は成城で大学もずっとそこだって聞いていた。
「さ、階段あがるよ」
2階の店に上がっていった。
ドアを開けて麗華さんを店に入れると、マスターがちょうど入り口に立っていた。
「麗華。ひさびさだねー」
ヒゲのどう見ても体重が100kgあるマスターだった。
「こんばんわ。席空いてる?二人なんだけど・・」
「いつもの席あいてるよ」
マスターは指で席をさしていた。
「なーんだ。連れはお前かー」
マスターはびっくりしていた。
「え?知ってるの?劉ちゃんのこと?」
麗華さんもびっくりしていた。
「なーんだ言いなさいよ劉ちゃん。この店しってるなら・・よく来るの?ここ?」
「そんなに来ませんよ。でも、マスターの実家が田舎の家の近くなんですよ。それでなんかよくしてくれるんですよ」
実家も近くだったけど、卒業した高校が一緒だった。遠い後輩だった。
「そうかー1回も会ったことないね。ここで劉ちゃんと私」
席に座りながら、麗華さんが本当に不思議そうな顔で聞いてきた。
マスターはもうグラスとかをせっせと用意してるみたいだった。
「麗華のボトル?それとも劉のボトル?それとも新規?どっちにするー?」
麗華さんに聞いているみたいだった。
「新規でーいれてー」
「あ、いいっすよ。入れてあるので麗華さん」
言い終わらないうちにヒゲのマスターがボトルを持ってきた。
「麗華と劉が知りあいとは知らなかったなー」
「付き合ってるのよ。今日がはじめてのデートなのよ」
冷静に言ってる麗華さんが、おかしかった。
それを真顔で聞いてるマスターはもっとおかしくて笑いそうだった。
「ビックリだわ。こいついいかねー」
そこまで言うかよって思った。
「あら、そう、けっこうかっこいいじゃん。タイプなのよ」
そこまで落ち着いて言わなくても・・って思った
「へー。この手もタイプとは知らなかったなー。年下だぞ。こいつ・・」
「知ってるわよ。それぐらい・・」
俺はずっと、会話には参加しないで水割りを作っていた。
マスターは首をふりながら、仕事にもどっていった。
「あんまり、からかうと、信じますよ。あのマスター・・」
「いいのよ。この頃彼氏なかなか出来ないねーって私のことからかうんだもん。いつも・・」
笑いながら麗華さんはうれしそうだった。
「さ、乾杯しましょ」
テーブルの上の小さなろうそくを挟んで乾杯した。
麗華さんは綺麗だった。
飲んでる途中で麗華さんはマジックを持ってきてカティーサークのボトルに名前を書き出した。
「ryuu reika」って書いていた。
麗華さんはそのボトルを近くを通ったマスターに見せて笑っていた。

JAZZが静かに店内を流れていた。
酔った麗華さんはテーブルの上にあった俺の手を握っていた。
俺はそのままにしていた。
断り方がわからなかった。

作品名:南の島の星降りて 作家名:森脇劉生