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花園学園高等部二学年の乙女達

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そして、教師が去ると共にササーッと満ち潮の如く女子たちが群がってきた。
芳田咲は、ん?っと首を回す。
ふわりと爽やかな香りが彼を取り巻き、女子たちはふわぁっと甘い溜め息をついた。
…こんな、こんな素敵なまるで王子さまのような男は初めてだった。
もちろん彼女たちにはいずれも婚約者候補が数人いたが、皆金持ちで愛想はいいものも魅力はほとんど持ち合わせていなかったのだ。

乙女たちは囁く。

…来たわ

来たわ

来たわ…


「…えっと…みっ皆さんこんにちは。」

咲は急に緊張してきた。


…確かに自分は今までも周りにもてはやされてきた。
しかしそこにはいつも「男」ガードがあったのだ。

別に友人たちは何かをしてくれたわけではない。
だからそれまではちっとも気がつかなった。


…周りに群がる乙女たち。

咲は汗を流し初めていた。

(…これじゃまるで…)


くすくすくすと微笑みあいながら周りを取り囲む女子、女子、女子…。


咲は廊下へ視線を游がす。
職員室に待避したい。

「…のわっ。」

廊下にはセーラー服がずらっと立ち並び自分一点を見定めていた。

中には3年部の人間も混じっている。

(これじゃまるで…)


咲は泣きそうな顔で学級委員をみた。

敵対心むきだしの「けっ自分で何とかしろや」という顔をしている。

誰かまともそうな人間…ときょろきょろする。

壁の端に立つ美少女と目があった。いかにもお嬢様といった感じで、優しそうな雰囲気だ。
咲は助けてほしくてにこっと微笑んだ。

…王子のように。


それがいけなかった。

何か勘違いした幾人もの乙女たちがよりいっそう咲に詰め寄ってきたのだ。

美少女はあろうことかにやにやとそれを見ている。

咲は半泣きになってきた。


(…僕が羊じゃないか!!)



…もはやこれまで。
咲に迫っていない唯一の人間は二人ともにやにやと傍観しているだけだ。


(…あ。)


咲は気付いた。
傍観も、迫りもしないただ一人の乙女に。


長く黒いみつあみ。
…雪女のように白い肌。

一人静かに、ぱらりと本を開くその姿。


…咲は誰にも聞こえない声で囁いた。



「…助けて副委員さん。」




パンッ






皆一斉に振り向いた。
すくっとたった副委員が 手を合わせている。

なんという威厳。



「…皆さん、講堂へ移動する時間です。速やかに列びなさい。」


咲ははぁっと息をついた。

乙女たちは一瞬停止し、波のようにササーッと咲から離れていった。
そして静かに廊下に列び出す。

いつのまにか廊下にいた野次馬たちも消えていた。

咲は安堵の溜め息を漏らした。

「…あぁ…。」

そしてくしゃりと柔らかな髪をかきあげ、疲れた表情をする。
その姿は苦悩する異国の王子のようだ。


(…なんてことだ。なんなんだこの学園は。…でも…)

彼女は、山城裕子は、自分を助けてくれたんだろうか?


咲はそっと裕子を目で追った。澄ました顔で列んでいる。

咲は頭を振ってすぐにその考えをかきけした。

(…まさかな。あの距離で聞こえるはずがない。)

それに彼女はそんなに義理がたいタイプには全然見えなかった。おそらくたまたまだろう。



…咲は自分の結論に納得し、すらりと廊下へ出た。










講堂、というか体育館に近い広さのその部屋は、厳かなのに美しく、いかにも元女子高、といった雰囲気だった。
部屋全体に柔らかな太陽の光が入ってくるようなつくりで、南側の中央には優しく微笑む大理石の女性像がたたずんでいる。
その姿はどこかマリア像に似ていて、咲は少し頭を傾けた。


乙女たちはしずしずとクラスごとに並んでいく。
時折目配せしあい、何事か囁いているものの咲がいた公立の共学高に比べると随分静かだ。

咲は好奇心に近い尊敬心を抱いた。


彼は先ほどより大分落ち着いていた。
…なぜならそこには自分以外の男がいたからだ。

講堂には高等課一年部から三年部までの生徒たちが集まっている。
既に共学化が始まっている一年部にはおそろしく少数ではあるが同性がいるのだ。

そのため咲は早くも懐かしさに身震いしていた。

…しかし彼は気付いていなかった。
自分の美しさが群を抜きすぎているということに。