小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

花園学園高等部二学年の乙女達

INDEX|11ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

秘密部屋


山梨和野はふてくされていた。
最近裕子がかまってくれないのだ。
いつにもまして忙しそうにしている。
確かに裕子は忙しくない時はないのだが…。
…しかし最近はいくらなんでも度が過ぎているのだ。

寮にだって以前なら一緒に向かっていたのに、もう一週間も続けて…部活のある朱美は元より…和野は一人きりで帰っていた。おまけに最近の朱美はやたらに機嫌が悪い。
あの例の転校生のせいだ。
彼が以前、不敏にも全校生徒の目の前で羽交い締めを受けていた時ちっともその腕をほどこうとしなかった。
それを朱美を始めほとんどの生徒が、無論和野も含め、彼が非力なせいだと思い込んでいた。

…ところが先週の体力測定で全然そんなことはないことが判明したのである。
…吉田咲はひたすら王子だったのだ。
しかし皮肉なことに、馬鹿にしているとむしろ朱美の怒りを買ってしまったのだった。


…そして近頃の裕子は帰宅時間になると何やら荷物をかきあつめ、すました態度で「先に帰っていて。」などと言う。


つまらないし、寂しいし、腹が立つしで、和野は7回目にそう言われた時とうとうおもいっきりすねた顔をしてやった。
和野はそうすると裕子が困ることを知っているのだ。
案の定裕子は困った顔をして…しかし微笑みながら

「しょうのないこねぇ」

と頭を撫でた。

和野はその裕子の台詞があまりにも優美な、甘やかす様な囁きだったのでうっかり満足しかけてしまった。そのためあわててすぐに頭を振って裕子の掌を拒んだ。
それはささやかな反抗心だった。


一方拒絶された裕子は一瞬目をぱっと開き驚いた顔をしたものの、(しかし実際裕子は驚いてなどいなかったと和野はふんでいる。おそらく和野に気を付かったのだ。)またすぐに柔らかく微笑んだ。

そしてもう一度和野の頭を撫で、ヒラヒラと去って行った。


…和野はその情景を思いだしながら深く溜め息をつき、寮部屋のドアノブを回した。

(…意地悪。)


花園学園は基本的に全寮制である。
特別な理由がない限り、ほとんどの学生がこの「カキツバタ」寮から学園に通っている。
カキツバタ寮は石だたみの坂道を挟んだ学園の南側に位置している。
ちなみにその坂は狭い木立に挟まれているため「木立坂」という名があるのだが、生徒達には「モンゴメリの坂」として知られていた。
その木立は小さいものの坂を薄暗く照らしだし、夕方近くに帰路につく生徒を怖がらせていた。そのためいつしか生徒達はこの坂道を赤毛のアンに出てくるおばけ森と掛け合わせて呼び始めたのだった。もちろん作者であるモンゴメリの名を拝借したのだ。


…話をカキツバタ寮に戻そう。


花園学園女子寮カキツバタは各部屋3人部屋となっている。
恐ろしく高い天井のため、乙女たちは備え付けの三段ベットを利用していた。
高等部にもなって三段ベットなど一般的な常識をもつ人間ならば理解が出来なかったかもしれないが、彼女たちは何の疑問も持たなかった。
何故なら小中等部では個人部屋など存在しなかったからだ。
彼女たちはまるで異国の修道院の孤児達、もしくは寄宿舎の生徒達の様にずらりと並んだ鉄の二段ベットで眠って育った。
そのため乙女たちの中にはむしろ甘やかされ過ぎていると感じているものもいた。


…また、カキツバタ寮にはまだ男子寮は存在していなかった。
もちろん現在学園の北側、つまり女子寮と真逆の位置にごく小さく縮小されたかのような男子寮が建設中ではあったが、いまいち工事は進んでいないかった。
よって花園学園の男子生徒たちは未だ皆自宅通いであった。



…和野は殺風景な部屋を見渡した。
備え付けの勉強机三つにこれまた備え付けのタンス三つ、そして裕子の私物である全身鏡のみが置いてある。

…そう、和野のルームメイトは朱美と裕子その二人であった。

ちなみに寮のどの部屋も大概が同じ様な造りとなっている。

…和野はすっかりくたびれていた。
それでもきちんと内側から部屋の鍵をかけ、皮の通学鞄を床に下ろす。

…それから和野はおもむろに鏡へと目を向けた。
そして慣れた手付きでその全身鏡を横にスライドさせる。
それから和野は、床板と床板の細い、1ミリほどの隙間に爪をぐっと引っ掛けた。
白いペンキで塗られた木製の床板だ。


…しばらくぐっぐっと力をこめていると、5ミリ程度の厚さの床はあっさりとはがれた。
縦横50センチほどもある正方形の板となっている。
和野はその外した床板を壁に立てかけた。
その下からは、もう一枚同じ様な見た目の白い板が姿を現した。
…和野は現れた板を左にスライドさせた。




その先には、下に続く暗い空洞。


和野はひょいとそこへ飛込んだ。