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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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第2章 gdgd生放送



 ほぼ同時刻、中京都の栄にある『CROSS自由放送放送』(旧NHK名古屋放送局)内のテレビスタジオでは、ある生放送が始まろうとしていた。

 そのテレビスタジオには、中京都軍の司令官である大須奈菜がおり、これから自分が伝えることの最終確認をしていた。
 つい10年ほど前までは、日本のテレビで軍隊への入隊呼びかけをするなんてことは考えられなかったことだが、CROSSが実権を握ったことにより、反CROSS分子や捕虜などの公開処刑や晒し者の刑の実況放送まで「自由」に放送できるようになった……。まさに「報道の自由」というわけだ。

 そして、放送が始まった。3DのCROSSのマークと昔の軍歌がメロディ−として流れる安っぽいオープニングが、中京都中の全てのテレビに3Dで映し出された。全てのテレビに映し出されているというのは、CROSSに人気があるからでは無く、特殊な電波を使って強制的に全てのテレビに映し出させているのだった……。(まぁ、コン
セントを抜くなり、放送自体を見なきゃすむ話だが……。)

 オープニングが終わると、大須の放送が始まった。彼女はカメラに向かって作り笑いをしながらおじぎをすると、目の前のテーブルの上に置かれた原稿を慣れた口調で読み上げ始めた。

   プルルッ!! プルルッ!!

 そこに突然、彼女のポケットに入っていた今どき珍しいガラケーが、着信音を鳴り響きかせ始めた……。
「……ちょっと失礼します」
彼女は、堂々とポケットからケータイを取り出す……。そして、彼女はそのまま通話を始めた。これも10年前なら、大変な騒ぎになっていただろうが、これもノープロブレムだ。

「……え? それ本当?」
「もう話しちゃったよ! ……そう」
「……わかったよ、上社……。 なんとかする……」
やはり、彼女に電話をかけてきたのは上社だった……。彼女の表情がどんどん険しくなっていった。

 そして、彼女はケータイを切りポケットの中にしまうと、そこで少し考えこんでから、
「すみませんが、今の放送で私が言った事は全て忘れてください。それでは失礼します。良いお年を!!!」
そう一気に言うと、彼女は放送を止めるようスタッフに合図する。
 即座に放送は終了し、中京都中のテレビには、ザァーという音がする「砂嵐」が流れ始める。
 放送時間以外のテレビ画面は、ずっとこの状態だ。大晦日定番の『紅白歌合戦』や『ゆく年くる年』も、ここ何年かは放送が無い。

「時間をムダにしただけじゃないのよ!!! CROSSも、ちゃんと連絡を取るように言ったばかりなのに、まるで何も成長していないじゃない!!! 嫌な大晦日じゃない!!!」
スタジオに、彼女の不満げな大声が響く。片付けをし始めたスタッフたちは、心から理解しているフリをしていた……。