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Re:try

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第一幕



 いろいろな事に飽き飽きしていた。
 
 受験も、交友関係も、繋がりの有る全てのもの全部に。

『何もかも壊れてしまえ』

 そう望んでもかなわないのはこの世界でこの時代。
 人々は繋がる為に、科学や技術を進歩させたのだから。

  
 なら僕が消えてみようか。

 そう思ったのが、事の始まり。













 人間というイキモノ。
 なんて汚らしい。穢らわしい。

 欲にまみれた顔はどれも不細工。
 きらびやかな衣装はそれと同等。
 それをいくら良く見せようと、全て張りぼての形。
 自身が美しい訳じゃない。
 美しいのは人じゃなくて“物”
 そう思っていれば、全ては平等。


 『貴方のため』と言い寄る親と教師には、自分の欲を満たす為の道具でしかなく。
 『ずっと友達だよ』安く言うクラスメイトはいつか他人を蹴落としてやると必死で。
 『何か悩んでるの』そういうのが嫌なのだと分かりもしない偽善者ばかり。


 いろんな事がくだらない、世界。
 要らないものがなくなって行く、世界。
 要らないものと決めつける、世界。
 全てが嘘で廻る様なガタついた、世界。

 嘘が潤滑油になる様な世界では、どの人も皆傲慢で嘘つきな一面を持つ。
 自分が当事者にならぬよう隠れて、罪から逃げる。
 それが政治家であれ、一般人であれ、罪は罪だ。

 そして罪には罰。
 その対等な関係さえも崩れだすこの世の中。
 嫌気がさしたっていいだろう。
 生きる気がなくなったっていいだろう。
 
 人間は臆病なだけで、自ら命を絶てない。
 刃物を肌に当てるのさえもためらう様な弱い生き物。

 いつの間にこんな弱くなった?
  
 自覚の無いまま衰退していく事の恐ろしさに気付かないのは更に愚か。
 『昔』を語れる程生きてはいない僕だけれど、この世の中が腐ってる事ぐらい分かってる。 
 

 自分に必要を感じないなら、自分で死んだっていい。
 そんな世界に僕は生まれた事。


 只それだけには感謝している。

作品名:Re:try 作家名:夜鳥