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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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あかいくつ

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 こんな田舎には絶対売ってないしゃれた洋菓子。まるで自分が違う世界に入り込んだような気がした。
「ごめんなさいね。汚しちゃって」
 女の子の笑顔に、ぼくはどきどきして、カップを持つ手がふるえた。
「あ、いえ。どうせぼろだから」
 部屋の中には静かなクラシック音楽が流れて、いい香りが漂っている。
 女の子が何か話しかけてくるけど、ぼくは上の空で、何をどう答えたのかわからない。
 しばらくして服が乾くと、家まで車で送ってくれた。
「あ、そこの靴屋です。どうも、ありがとうございました」
 ぼくが車からおりると、彼女もいっしょにおりてきた。
「まあ、ここからわたしの家が見えるのね」
 ぼくの家は海の真ん前。つづれおりの海岸通りの向こうには、つきだした岬にある別荘がよく見える。
 それから、彼女は店のウィンドゥーをのぞき込んだ。
「あ、この靴、かわいい」
 それは、もうずっと長いこと、ウィンドゥーにかざってある赤い靴だった。
 足首のところで細いストラップをとめるデザインだ。
 彼女に似合いそうだな、とぼくは思った。

「今の子、だれ?」
 車が見えなくなるまで見送ってから、家に入ろうとしたとき、お母さんが奥からひょっこり顔を出した。
「あの別荘の子。泥水はねられてさ。いいっていったんだけど、服、洗ってくれて、わざわざ送ってくれた」
「ええ? そうなの? あのお宅、すごいお金持ちなんですってね。奥さんが病気で療養にきたってうわさだけど、大変ね」
 お母さんが驚くのも無理はない。今さっきおじゃました彼女の家の様子を思い出して、ぼくも身震いした。
 運転手つきの外車に、二人もお手伝いさんがいる生活なんて。

 次の日、ぼくは驚いた。だって、昨日のあの子がぼくのクラス、六年一組に転校してきたんだ。
 名前は上野小路あやこさん。教室に、ぱっと花が咲いたようだった。
 席はぼくの隣、ほかのやつににらまれた。
「ぼ、ぼく、青木わたる。よ、よろしく」
 しどろもどろの自己紹介に、後ろのりょうたが、ひやかして背中をつついた。
 転校生は、休み時間になるとたいていとりかこまれるけど、不思議なことに、あやこさんにだれも近づかない。
 はじめこそ、おじょうさまの出現に、みんな気後れしたのだと思ったけど、三日もそんな日が続いた。
作品名:あかいくつ 作家名:せき あゆみ