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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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28

「誠司さんのことは・・・好きです」

答えを散々探して、やっと口からでた言葉がそれだった。
「それはどういう意味で?」
間髪いれずに言葉が返ってくる。
その答えを探すのにも時間がかかって、頭の中の言葉を総動員してみたけどピッタリ当てはまる言葉が見つからなかった。
「わからない?」
そう聞かれて素直に頷いた。
「お母さんとは違う感じ?」
それにも頷く。
「お兄さんみたい?」
それでも少し違うけれど、一番近かったから曖昧に頷いた。
「違うんだ?じゃあなんだろうね」
なんだか全部見透かされているな、ってあたらめて思う。
頷いたのに違うと思っていることがばれるなんて。

「空流くんはさ、鷹島さんとどうしたいの?」
どうしたい、と聞かれることなんて滅多に無かったから少し驚いた。
自分の意思を言葉にすることは得意じゃない。
それでも、答えないといけない予感がする。
この予感が何なのかはわからないけど、この質問にどう答えるかでこれから起こる事がすべて決まるような、そんな気さえした。
「誠司さんに迷惑をかけたくないです」
「それだけ?」
「自分のどんな行動がどう思われるかわからないから、それ以上は何もいえません」
そう言うと、敦也さんが少し顔をしかめた。
何かまずいこと言ったのか・・・急に不安になる。

「そうやって人の反応気にするのは癖なの?」
そう思っていることなんて、この人はすべてお見通し。
「そうだと思います」
「自分が言った言葉に自信があるなら堂々としてればいいのに」
「できたらいいのにっていつでも思ってます」
「そりゃそうか。その態度とか迷惑をかけたくないとか、かなり慎重派だね」
慎重派というのはおそらく良い言葉を選んでくれたんだろうと思う。
「じゃあさ、もし何をしても鷹島さんの迷惑にならないとしたら何を望む?」
何をしても鷹島さんの迷惑にならないのなら・・・?
そんなことは決まってる。
「一緒にいたい・・・です。誠司さんが仕事で忙しくってもいいから帰ってきたときに少しだけ顔を見せてくれれば、それだけで・・・」
「いい暮らしが出来なくっても?」
「毎日誠司さんに会うことができるなら、昔以下の暮らしでもかまいません」
誠司さんさえいてくれるなら、何も欲しがったりしないから。
「服とか靴とかをプレゼントしてくれなくても?」
今度は、こっちが顔をしかめる番だった。
「さっきから、お金が目当てみたいないい方しないでください」
「違うの?」
「違います。そんなものなくっても僕は誠司さんが好きです。一緒にいると安心するし、誠司さんが微笑んでるのを見るだけで幸せな気持ちになります。本当に・・・誠司さんは僕にとって大事な人なんです」
すべてに絶望していたときに、手を差し伸べてくれた人。
暗闇だった心に差し込んできてくれた一筋の光のように。
差し込んできただけじゃない。
その後も周りをずっと明るく照らし続けてくれた。
僕のためにと気遣ってくれるのがとてもうれしかった。

「空流くん、恋人がいたことはあるの?」
突然の質問の変更。
「次は僕の番じゃないんですか?」
「いいから。なんなら次に二つ質問してもいいし」
そう言う条件ならとしぶしぶ答える。
「恋人がいたことなんてないですけど・・・」
「好きな子がいたことは?」
「それも、あんまり・・・」
「なるほどね、初恋もまだってことか」
そうあっさり言われるとなんか悔しい。

「俺からの質問はこれで終わり。二つといわず、何か聞きたいことがあるなら今のうちに聞いたほうがいい。質問タイムの残り時間はそう多くないだろうからね」

敦也さんがそういった瞬間に下手の扉がたたかれた。
「敦也、そろそろいいか?」
「もうちょっと。あと10分」
扉の向こうから聞こえてきた声に敦也さんがそう答える。
「というわけだ」
僕に向かってそう言うと、つけていた腕時計を投げてよこした。
あと10分を有効に使え、と。
そう言うように。