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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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27

「じゃあ、次は空流くんがどうぞ」

「僕はこれからどうなるんですか?」
ふと、そんな質問が口から出た。
それでも、今まで聞かなかったのが不思議な質問。

少しだけ敦也さんがうれしそうに笑いながら言った。
「自分の将来のことを気にするのはいいことだね」
よくわからずに首をかしげると、言葉を付け足してくれた。
「1時間前の君は見てられなかったから」
1時間前はここにつれてこられたばかりの時。
あのときは、もうどうなってもいいしどうでもいいと思ってた。
こんな短時間で変わってしまうんだから、単純。
でもそう思うようになったのには、目の前にいるこの人のおかげなんじゃないかと思う。
「質問に答えてくれてませんけど・・・」
「うん、今のはただの俺の感想。君がこれからどうなるかは、俺にはわからない」
「それも、答えになってません」
「知ってる。でも予想ならできる。このままだと、樹は君を酷く傷つけると思う」
「でも、僕はもう傷ついたりしないと思います」
「どうして?」
「僕を傷つけることでは、僕は傷つかないからです」
「でも、もし樹が鷹島さんに危害を加えたら?」
「そのときは、あの人を許しません」
「なるほど」

そう言って、敦也さんは口を閉じた。
どちらも何も言わない間はすごく長く感じられたけど、敦也さんが次の言葉を出すために必要な時間だとなんとなくわかっていた。

ふと窓の外を見ると、もう日が傾きかけている。
夏の空はまだ青くて明るいけれど、これからくる暗闇を少しだけ予想させるような、そんな空だ。

「この状況で鷹島の若を傷つける方法なんてたくさんある」
ふと敦也さんが言った。聞こえるか聞こえないかの小さな声で。
たぶん、聞かせようと思って言った言葉ではなかったんだと思う。
もし聞き返したら、なんでもないよって言って次の質問にいってしまうような、そんな気がした。
それでも、聞き流すわけにはいかないから、言葉を返す。
「いくらあの人でも誠司さんみたいな偉い人に危害を加えるなんてできないんじゃないですか?」
敦也さんは少し驚いてたけど、さらに言葉を返してくれた。
「直接的には無理だろうね」
「他にどんな方法があるんですか?」
そう聞くと、少しだけためらって、答えを出した。
「一番極端な話をするけど、もし鷹島さんの大切な人や親しい人が亡くなったら鷹島さんは少なからず傷つく。これ以上は新しく質問をしない限り言わないよ」

どういう意味だか、考えるのに少し時間がかかった。
その時間を作ってくれるためなのか、敦也さんは黙っていた。

『極端な話』という言葉を除けば、誠司さんの大切な人を殺す、という脅しにとれなくもない。
けれども、『極端な話』と言うからにはここまではしないだろうと思う。
間接的に人を傷つける例を教えてくれただけだ。
実際に何をやるつもりなのかは、新しく質問をしないとわからない。

「じゃあ、次は君と鷹島さんがお互いについてどう思ってかを教えて」
完璧なタイミングで、敦也さんから新しい質問が出た。
この人はいつも答えるのが大変な質問ばかりしてくる。
「誠司さんが思ってることはよくわかりません。・・・でも一緒にいたときは嫌われてたわけじゃないとは思います」
「一緒にいるときは?」
「勝手に誠司さんのところを出てしまったので、その後に誠司さんがどう思ったのかは全くわかりません。あんな勝手なことをしておいて嫌われてないと思うのはおこがましいです」
敦也さんが不思議そうな顔をしたから誠司さんの別荘を出た経緯を話した。
そうして、誠司さんと再び会う約束をしたということも。
その間には俊弥さんという大きい存在があったことも隠さずに話した。

「鷹島さんのことはわかった。じゃあ次は君が鷹島さんをどう思ってるのかを話す番」

この混乱した気持ちをどう伝えていいのか。
その質問に答えるためには、しばらくの時間が必要だった。