小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

君ト描ク青空ナ未来 --完結--

INDEX|60ページ/159ページ|

次のページ前のページ
 

22

「簡単に言えば俺たちがしたことってただの誘拐なんだけどね」
まあ普通の誘拐よりも手はこらしてけれど、と付け加える。
「どういう手段でかはいえないけど、君がでかける予定とかをリサーチして、あのお人よしそうな夫妻と君をちょっと騙してつれてきただけ」
敦也って人はそこまで説明する。
その後を引き継ぐように匠さんが言った。
「仲原さんには足止めをしたりして、俺たちが先に着くように計画もしたし」

「でも、法律的に言えば先に誘拐働いたのは向こうだよ」
そういったのは、樹さん。
「だってもともと君は一ノ宮の保護のもとにある人間なわけでしょ?うちに無断で君を預かるなんて立派な誘拐だよね。訴えればこっちの勝ちだよ」

この人が言ってるのは、誠司さんのこと・・・?
誠司さんを訴えるって言ってる・・・?

そんなことは、絶対にさせない
「僕は、自分の意思で誠司さんのところにいたんです」
強く、そう言う。
「でも、きみって18歳未満だよね?そういうの無理だよ」
樹さんのその言葉には何も返せなかった。

「あ、そういえば、鷹島さん君の事追ってこなかったみたいだね、もちろん俊弥も」
敦也さんが、そう言った。
「たぶん鷹島さんなら、匠さんの顔の特徴聞いただけで一ノ宮の長男だってわかってると思うんだけど。結局一ノ宮の家の前に鷹島さんらしい車はあらわれなかったんだよね」
「現れれば、親父の思うとおりになったのにね」
樹さんが言う「親父」とは、一ノ宮の主人。
数ヶ月前に会ったあの人。
「家の前で鷹島さんが待ち伏せしてるところに警察を呼んで、スクープにするってやつか?」
今度は匠さんが聞く。
「そう、それ。そんなに上手くいくわけないのにね」
樹さんが答えながら、笑う。

そんなことを考えていたのか、と恐ろしくなる。
誠司さんがそうならなくて、本当に良かった。

「それで、鷹島さん罠にはめる計画は失敗したわけなんだけど、第一目標の君を奪還するっていうことは達成できたというわけ」
敦也さんがそう説明して、話は終わり。

「それで、これからどうしようかを話し合わなきゃいけないんだよな」
ため息をつきながらそう言ったのは、匠さん。
いかにも厄介なもの抱え込みました、って言う雰囲気。

「厄介なら、連れ戻さなければ良かったじゃないですか」
そう言うと、敦也さんはおかしそうに笑い、二人の兄弟は意外そうな顔をした。
「そうそう、この子、意外とはっきりモノ言うんだよ」
敦也さんが二人にそう説明する。
敦也さんの説明を受けて、樹さんが何か面白いことを思いついたように、ニヤリと笑った。

「兄貴、俺ひきうけてもいいよ」
樹さんが突然そう言い出す。
「どういう風の吹き回しだよ」
匠さんがそれに応じた。
「なんか面白そうかな、って思って」
何かをたくらんでるような笑みを湛えたまま言った。
「俺はそれで良いけど。あんまりまずいことはするなよ」
「わかってるよ」
「それなら、話はついたってことでいいのか?」
「いいんじゃない?」
「それなら、俺は仕事に戻る」
「いってらっしゃい」
あっという間に兄弟のやり取りは終わり、匠さんのほうは部屋を出て行った。

「俺は手伝ったほうがいいのか?」
敦也さんが樹さんに問いかける。
「手伝ってくれるのか?」
樹さんの問いかけに敦也さんが頷く。

その次の瞬間に樹さんの口から出たのは予想だにしない言葉。

「まずは、一ノ宮本邸に連れて行く」

頭の中が真っ白になったっていうのは、きっとこういう瞬間のこと。